「日本で働きたいけれど、ビザの手続きってどうすればいいの?」
「外国人を新しく雇う予定だけど、持っているビザの確認方法がわからない……」
日本に関わる外国人の方や、外国人雇用を検討している企業の担当者様から、このようなご相談を毎日のようにいただきます。実は、多くの方が日常的に使っている「ビザ(VISA)」という言葉、法律的には全く別の意味を持つ「在留資格」と混同されているケースがほとんどです。
この2つの違いを正しく理解していないと、良かれと思って進めた手続きがストップしてしまったり、最悪の場合は「知らなかった」では済まされない入管法違反(不法就労やオーバーステイ)に繋がってしまったりするリスクがあります。
そこで今回は、国際業務を専門とする行政書士が、「ビザ」と「在留資格」の違いについて、わかりやすく、具体例を交えて解説します。この記事を読めば、日本の入国・滞在の仕組みがすっきりと理解でき、これからどのような手続きを進めればよいのかが明確になります。
行政書士:中田ちなみに、当事務所でも、ホームページ上やお客様のと対面で「在留資格」と言うべきところをあえて「ビザ」という表現でお伝えしていることが多々あります。
お客様へのわかりやすさ優先でそのようにしていますが、本来は全く意味が異なるものであるということを、この記事では解説していきます。
多くの人が勘違いしている「ビザ」と「在留資格」の基本
日常会話やニュースなどでは、「就労ビザ」「学生ビザ」「配偶者ビザ」といった言葉が当たり前のように使われています。また、「ビザの期限が切れそうだから、入国管理局に行ってビザを延長してくる」という話を聞くことも珍しくありません。
しかし、入管法(出入国管理及び難民認定法)という日本の法律に照らし合わせると、これらの使い方は厳密には正しくありません。
世間一般で「ビザ」と表現されているものの約9割は、法律上の「在留資格(ざいりゅうしかく)」を指しています。
- 間違った表現の例
「就労ビザの更新手続きをする」 - 正しい法律上の表現
「在留資格(例えば『技術・人文知識・国際業務』など)の在留期間更新許可申請をする」
日常的なコミュニケーションの場であれば、「ビザ」と言っても意味は通じますし、実務上も大きな問題にはならないことが多いです。しかし、いざ法的な書類を作ったり、出入国在留管理庁(入管)や海外の日本大使館とやり取りをしたりする段階になると、この2つを混同していることが原因で深刻なトラブルが生じることがあります。
なぜなら、ビザと在留資格は、それを発給・許可する「官庁(国の組織)」も違えば、役割を持つ「場所」も、法律上の「意味」も全く異なる別物だからです。それぞれの役割をしっかりと紐解いていきましょう。
ビザ(査証)とは何か?〜日本に入るための「推薦状」〜
法律上の「ビザ」は、日本語で「査証(さしょう)」と言います。まずはビザの正確な定義と、その役割について解説します。
ビザを発給するのはどこ?
ビザを取り扱うのは、日本国内の役所ではありません。外国にある日本の大使館や領事館(在外公館)です。組織の管轄でいうと、法務省ではなく外務省の領事局が担当しています。
ビザの正体と役割
外国人が日本へ渡航しようとする際、自分の国にある日本大使館などにパスポートを提出してビザの申請を行います。大使館側は、その外国人の身元や渡航目的をチェックした上で、問題がないと判断した場合に、パスポートにシールを貼ったりスタンプを押したりします。これが「ビザ(査証)」の正体です。
法的な性質として、ビザは「このパスポートは権限のある官憲によって適法に発給された有効なものであることを確認し、かつ、当該外国人が日本に入国しても差し支えないという推薦状(紹介状)」のようなものです。
つまり、海外の日本大使館の領事官が、日本の空港にいる入国審査官に対して、「この外国人の方の身元を事前に確認しましたが、日本に入国させても問題なさそうですよ」と太鼓判を押してあげる仕組みなのです。
注意!ビザは「入国許可証」ではない
ここで非常に重要な注意点があります。ビザを持っているからといって、100%確実に日本に入国できるわけではないということです。
ビザはあくまでも外務省(大使館)による「推薦状」にすぎません。最終的に日本への上陸を許可するかどうかを決めるのは、日本の空港や港にいる法務省(出入国在留管理庁)の入国審査官です。
もし、ビザを持っていても、日本の空港で行われる上陸審査の段階で「入国目的の虚偽」や「上陸拒否事由」が見つかった場合は、入国を拒否される(上陸不許可になる)ことがあります。
査証(ビザ)免除措置について
観光や短期のビジネス出張(会議や商用での業務連絡など)を目的として日本を訪れる場合、すべての外国人が事前にビザを取らなければならないわけではありません。
日本政府は、国際交流の円滑化や観光振興などの観点から、治安や出入国管理上の問題が比較的少ない国・地域との間で「査証相互免除取決め」を締結しています。最新の制度(2025〜2026年現在)では、イギリス、アメリカ、韓国、台湾など、世界70カ国以上の国・地域の一般旅券(パスポート)所持者に対して、この査証免除措置(ノービザ入国)を実施しています。
これらの対象国・地域の方が、報酬を伴わない短期間の観光や親族訪問などの目的で来日する場合は、事前に現地の大使館でビザを取得する必要はなく、パスポートだけを持って飛行機に乗り、日本の空港で上陸申請を行うことができます。ただし、日本国内の企業から給料をもらうような「就労活動」を行う場合や、各国ごとに定められた短期滞在の期間(多くは90日以内や15日以内など)を超えて滞在する場合は、査証免除国であっても事前に適切なビザを取得しなければなりません。
在留資格とは何か?〜日本に滞在するための「法的なライセンス」〜
ビザが日本に入国するための推薦状であるのに対し、「在留資格(ざいりゅうしかく)」は、外国人が日本に滞在し、活動するための法的な根拠となる資格です。いわば、日本国内で過ごすための「活動ライセンス(滞在許可証)」と言えます。
在留資格を管轄するのはどこ?
在留資格を管轄するのは、外務省ではなく、法務省の外局である出入国在留管理庁(通称:入管、入国管理局)です。日本国内にある地方出入国在留管理局(東京入管や大阪入管など)や、空港の出入国審査場がその窓口となります。
在留資格が付与されるタイミング
外国人が日本の空港(成田、羽田、関西、中部など)に到着すると、入国審査官による「上陸審査」を受けます。ここでパスポートや事前に取得したビザなどがチェックされ、問題がなければ、審査官によってパスポートに「上陸許可」の証印(シール)が貼られます。
この上陸許可のシールが貼られた瞬間に、その外国人に具体的な「在留資格」と「在留期間」が与えられます。また、中長期にわたって滞在する外国人には、その場で(あるいは後日郵送で)顔写真や在留資格、期限が記載された「在留カード」という身分証明書が交付されます。
在留資格の最も重要なルール
在留資格の制度を理解する上で、絶対に知っておくべき根本的なルールが2つあります。
① 一在留一在留資格の原則(1人1資格のルール)
日本の入管法では、1人の外国人が同時に複数の在留資格を持つことは認められていません。どれほど優秀な人であっても、与えられる在留資格は常に「1つだけ」であり、それに伴う在留期間も「1つの期間」だけです。
② 活動の制限(在留資格の範囲内でしか動けない)
在留資格は、日本で「どのような活動を行うか」あるいは「どのような身分・地位にあるか」によって細かく分かれています。外国人は、自分に与えられた在留資格の範囲内に定められた活動しか行うことができません。
例えば、「留学」という在留資格を持っている外国人は、日本で学校に通って勉強することが本業として認められています。そのため、原則として日本で会社を経営したり、フルタイムの正社員として働いて給料をもらったりすることはできません(アルバイトをするには別途「資格外活動許可」が必要です)。
もし、認められた範囲を超えて勝手に働いてしまうと、不法就労として退去強制(強制送還)の対象になってしまいます。
在留資格の種類と分類(全29種類)
現在、日本の入管法で定められている在留資格は、全部で29種類あります。これらは大きく分けると、日本における外国人の活動そのものに着目した「活動類型資格(入管法別表第1)」と、その外国人の血縁関係や婚姻関係などの身分に着目した「地位等類型資格(入管法別表第2)」の2つに分類されます。
実務上、非常に重要となる「就労(仕事)ができるかどうか」という観点から、分かりやすく整理した一覧表を作成しました。
| 分類(法律上の区分) | 就労活動の可否と範囲 | 具体的な在留資格の例 |
| 就労可能資格(制限あり) (活動類型資格:別表第1) | 定められた特定の職種・範囲に限って、会社等から報酬を得て働くことができる資格。 | 技術・人文知識・国際業務(サラリーマン、ITエンジニア、翻訳通訳など)、経営・管理(社長、役員)、教授、芸術、報道、医療、研究、教育、企業内転勤、介護、興行、技能(調理師など)、特定技能、技能実習など |
| 就労不能資格(原則就労不可) (活動類型資格:別表第1) | 原則として、収入を伴う事業の運営や報酬を受ける活動が禁止されている資格。 | 留学、家族滞在(就労外国人の配偶者や子)、短期滞在(観光、出張など)、文化活動、研修 |
| 就労制限なし(自由に就労可) (地位等類型資格:別表第2) | 日本における身分や地位を根拠とする資格。日本人と同じように、職種の制限なくどんな仕事でも自由にフルタイムで働くことができる。 | 日本人の配偶者等(日本人の夫・妻、実子など)、永住者、永住者の配偶者等、定住者(日系人、離婚後の定住など) |
※「特定活動」という在留資格については、法務大臣が個々の外国人に対して個別に活動内容を指定するため、その内容によって就労ができる場合とできない場合に分かれます(ワーキングホリデーやインターンシップ、医療滞在などがこれに該当します)。
このように、在留資格ごとに「日本でできること」が厳格に決められているため、外国人本人や雇用主は、現在の在留資格が滞在目的に合致しているかを常に確認しなければなりません。
ビザと在留資格の違いをチケットに例えると?
ここまで「ビザ」と「在留資格」のそれぞれの定義を解説してきましたが、まだ少しイメージしづらいという方もいらっしゃるかもしれません。そこで、専門知識がなくても一発で理解できるよう、身近なものに例えて解説します。
一番わかりやすいのは、映画館やコンサート会場の「チケット(入場券)」と「座席指定券・エリアパス」の例えです。


一度日本の空港を通過して中に入ってしまえば、最初に使った「入館予約(ビザ)」は(数次有効などの特殊なものを除き)その時点で役割を終え、使用済みとなります。日本国内に滞在している間、その外国人が合法的に日本にいることを証明する唯一の盾となるのは、ビザではなく、上陸時に新しく付与された「在留資格」なのです。
だからこそ、日本に入国した後の手続き(期限を延ばしたい、結婚したので資格を変えたいなど)は、すべて「在留資格の手続き」であり、行くべき場所は大使館ではなく、日本国内にある「入国管理局(出入国在留管理庁)」になるわけです。
海外から外国人を呼び出す際の流れ〜在留資格認定証明書(COE)とビザ・在留資格の関係〜
「ビザ」と「在留資格」の役割の違いが最もはっきりと現れるのが、海外にいる外国人を新入社員や留学生、あるいは結婚した配偶者として日本に呼び寄せる際の手続きです。
長期滞在の目的で外国人を日本に呼ぶ場合、いきなり海外の日本大使館にビザを申請しても、現地の領事官は「日本に本当の受け入れ先があるのか」「会社に十分な経営基盤があるのか」といった日本国内の事情を詳細に審査することができません。そのため、審査に膨大な時間がかかったり、実質的に発給が難しくなったりしてしまいます。
そこで実務上、圧倒的多数のケースで利用されているのが、「在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility:通称COE)」を利用した制度です。この手続きの流れを見ると、ビザと在留資格がどのように連携しているかが理解できます。
一般的な手続きは、以下の4つのステップで進みます。


このように、日本国内の入管(法務省)が事前に「在留資格」の該当性をチェックしてCOEを出し、それを基に海外の大使館(外務省)が「ビザ」という推薦状を発給し、最後にまた日本の空港(法務省)で「在留資格」を確定させるという、見事なバトンリレーが行われているのです。
この流れを知っておくだけでも、企業の人事担当者様や、海外から家族を呼びたい方の手続きの進め方はかなりスムーズになります。
よくある疑問・トラブル事例Q&A
実務の現場で外国人の方や企業の担当者様から特によく寄せられる質問を、Q&A形式で詳しく解説します。
- パスポートにあるビザの有効期限と、在留カードの期限が違うのはなぜですか?
-
それぞれ「日本に入るための期限」と「日本にいていい期限」という異なる役割を持っているからです。
例えば、海外の日本大使館で発給されたビザのページを見ると、「Date of Expiry(有効期限)」として、発給から3ヶ月後の日付が記載されていることが一般的です。これは「発給されてから3ヶ月以内に日本の空港に行って、入国手続きを済ませてくださいね」という、ビザ(推薦状)そのものの有効期限です。一方、日本の空港を通過した際にもらう在留資格(在留カード)の期限は、例えば「1年」や「3年」など、日本国内での滞在目的に応じた期間が設定されます。
日本に入国した時点でビザの役割は終了していますので、パスポートに貼ってあるビザの有効期限が過去の日付になっていても、全く問題ありません。入国後は、在留カードに記載されている「在留期間の満了日」だけを正しく確認・管理してください。
- 在留期間を延ばしたい(ビザを延長したい)ときは、どこで何をすればいいですか?
-
国内の「地方出入国在留管理局」で「在留期間更新許可申請」を行います。海外の大使館では手続きできません。
よく「ビザの延長」と表現されますが、正しくは「在留資格の期間更新」です。日本国内の役所(入管)が管轄する手続きですので、お住まいの地域を管轄する入国管理局に書類を提出します(最近は一定の条件のもと、マイナンバーカードを用いたオンライン申請の対象も拡大されています)。
この手続きは、現在の在留期間が満了する概ね「3ヶ月前」から申請を受け付けています。期限を1日でも過ぎてしまうと、悪気がなかったとしても「不法残留(オーバーステイ)」となり、強制送還や出国命令の対象になってしまいます。また、オーバーステイ状態になってしまうと、原則として帰化申請や永住申請などの道も閉ざされてしまいますので、スケジュール管理には細心の注意が必要です。
- 就労の在留資格で働いている外国人が、別の会社に転職するときはビザの手続きが必要ですか?
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在留資格の種類によります。また、転職後の仕事内容が、現在の在留資格の範囲内であるかによって必要な手続きが変わります。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っている外国人が、前の会社を辞めて別の会社に転職する場合、新しい会社での職務内容(例えばITエンジニアから別の会社のITエンジニアへ転職するなど)が、現在の在留資格の範囲にぴったり収まっている必要があります。
この場合、必須の手続きとして、転職から14日以内に入管へ「所属機関に関する届出(契約機関の変更届)」を提出しなければなりません。
さらに、次の在留期間更新のタイミングで「新しい会社での仕事内容が本当に在留資格に適合しているか」が厳しく審査されるため、実務上は、転職後すぐに「就労資格証明書交付申請」という手続きを入管に対して行っておくことを強くお勧めします。
これを行っておけば、入管から事前に「新しい会社での仕事も問題ありません」というお墨付き(証明書)をもらうことができるため、次回の更新時に不許可になって突然働けなくなるという致命的なリスクを防ぐことができます。もし、転職によって職種が大きく変わる場合(例:ホテルのフロント職から、自分で貿易会社を立ち上げて社長になる場合など)は、転職して働き始める前に、在留資格そのものを「技術・人文知識・国際業務」から「経営・管理」などへと変更する「在留資格変更許可申請」を行い、許可を得てからでなければ新しい業務に就くことはできません。
正しい知識がトラブルを防ぐ!不安な手続きは専門家に相談を
今回は「ビザ(査証)」と「在留資格」の違いについて、法律上の定義から具体的な例え、実際の呼び寄せの手続きまで徹底的に解説してきました。最後に、重要なポイントをおさらいしましょう。
- ビザ(査証)
海外の日本大使館(外務省)が発給する、日本に上陸するための「推薦状」。入国した時点でその役割を終える。 - 在留資格
日本の空港や入管(法務省)が付与する、日本国内に滞在して活動するための「法的なライセンス」。 - 入国後の管理
日本に入国した後は、パスポートのビザではなく、在留カードの資格名と有効期限をベースにすべてのアクション(更新・変更など)を行う。
入管法の手続きは、年々複雑化しており、外国人の受け入れを行う企業側にとっても、知識不足によるトラブルは経営上の甚大なリスクとなります。万が一、現在の在留資格で認められていない仕事をさせてしまったり、期限切れの状態で働かせてしまったりすると、雇用主側も「不法就労助長罪」という重い罪に問われ、3年以下の拘禁刑(懲役)や300万円以下の罰金が科される可能性があります。
「自分の持っている在留資格で、今の仕事を続けても大丈夫なのだろうか……」
「新しく外国人を採用したいけれど、手続きに必要な書類が複雑すぎて進まない……」
「海外から家族を呼び寄せたいけれど、一度申請が不許可になってしまって困っている……」
そのような不安や悩みを抱えている方は、決して一人で悩まずに、まずは専門家にご相談ください。
WILL行政書士事務所では、国際業務のスペシャリストとして、外国人の方のビザ・在留資格に関するあらゆる申請手続きを全面的にサポートしています。最新の法制度の審査傾向に基づき、お客様お一人おひとりのご事情に合わせた最適な解決策をご提案いたします。
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