在留資格「研修」とは?取得要件から技能実習との決定的な違い・注意点まで行政書士が解説

「海外の子会社や取引先のスタッフを日本に呼んで、自社の技術を学ばせたい」
「日本の優れたノウハウを吸収するために、日本の企業で研修を受けたい」

企業のグローバル化が進むなか、このような声が増えていると感じます。その際に活用されるのが在留資格「研修」(いわゆる研修ビザ)ですが、インターネットで検索すると「技能実習」や「就労ビザ」といった言葉が入り乱れ、「結局、うちのケースではどのビザを取ればいいの?」と混乱してしまう方も多いのではないでしょうか。

特に、「研修生に給料を払ってもいいのか?」「実務(実際の業務)をさせてもいいのか?」といった疑問は、多くの方がつまずくポイントです。ここで判断を間違えてしまうと、悪気はなくても「不法就労」とみなされ、受け入れた企業側が厳しいペナルティを受けてしまう恐れすらあります。

この記事では、国際業務の専門家である行政書士が、在留資格「研修」の取得要件、申請準備から取得までの流れ、そしてよくある注意点について、できるだけ噛み砕いて解説します。この記事を最後までお読みいただければ、あなたの会社が安全かつスムーズに外国人研修生を受け入れるための道筋がはっきりと見えてくるはずです。

目次

在留資格「研修」のキホン:そもそもどんなビザ?

在留資格「研修」とは、一言でいえば「日本の企業や団体に受け入れられて、日本の優れた技能、技術、または知識を学ぶ(修得する)ためのビザ」です。

目的はあくまで「学び」であり、日本で学んだ技術を母国に持ち帰り、母国の経済発展に役立ててもらうこと(技術移転・国際貢献)を前提としています。

「研修」と「技能実習」の決定的な違い

「研修ビザ」と聞いて、多くの方が真っ先に思い浮かべるのが「技能実習制度」ではないでしょうか。ニュースなどでもよく取り上げられるため混同されがちですが、法律上、この2つは全く異なる制度です。

最大の違いは、「労働関係(雇用関係)があるかどうか」と「報酬(お給料)の有無」です。

  • 技能実習
    日本の企業と雇用契約を結び、労働者として働きながら技術を学びます。労働基準法などの労働関係法令が適用されるため、日本人と同様に最低賃金以上の「給与(賃金)」が支払われます。
  • 研修
    日本の企業とは雇用契約を結びません。労働者ではなく「学生(学ぶ人)」という立場です。そのため、労働の対価としての「給与(賃金)」を支払うことは法律で固く禁じられています。

研修生には1円も払ってはいけないの?(研修手当について)

「給与を払ってはいけないなら、研修生はどうやって日本で生活するの?」と疑問に思われるでしょう。

ここで登場するのが「研修手当」という考え方です。労働の対価(給料)としてお金を渡すことはできませんが、日本に滞在する間の生活費、食費、交通費、宿泊費などの「実費の補助(お小遣い程度)」として、研修手当を支給することは認められています。

ただし、この研修手当が「実質的な給与」と見なされると、不法就労助長罪に問われる危険があります。時給換算で計算したり、残業代のようなものをつけたりすることは絶対に避けなければなりません。「あくまで日本での生活をサポートするための実費補助である」という明確な線引きが必要です。

在留資格「研修」で「できること」と「できないこと」

「研修」の在留資格で日本に滞在する期間中、外国人はどのような活動ができるのでしょうか。

できること:座学や見学(非実務研修)

座学での講義、工場見学、機械の操作方法の説明を横で聞くといった、商品の生産やサービスの提供に直接関わらない学び(非実務研修)が中心となります。

条件付きでできること:実務研修(OJT)

「マニュアルを読むだけでは技術は身につかない。実際に機械を触らせて学ばせたい」というケースもあるでしょう。このように、実際の業務を通じて技術を学ぶことを「実務研修」と呼びます。

在留資格「研修」において実務研修を行うことは可能ですが、後述する非常に厳しい追加要件(上陸許可基準)をクリアしなければなりません。また、実務研修を行う場合でも、それが「労働力」として扱われてはならず、あくまで指導員が横について教育・指導の一環として行う必要があります。

できないこと:単なる労働(単純作業)

反復継続して行えば誰でもできるような単純作業(例:単なる荷物の箱詰め、ラインでの単純な組み立て作業、レストランでの皿洗いなど)を「研修」と称して行わせることはできません。また、前述のとおり、労働者としてシフトに組み込み、会社の売上に直接貢献させるような働き方をさせることは違法となります。

絶対に押さえておきたい!「研修」ビザの取得要件

在留資格「研修」を取得するためには、出入国在留管理庁が定める厳しい審査基準(上陸許可基準)をクリアする必要があります。ここでは、一般的な日本企業が海外企業から研修生を受け入れるケースを想定して解説します。

※なお、国や地方公共団体、JICA(独立行政法人国際協力機構)などの公的機関が実施する研修の場合は、以下の要件が大幅に緩和されます。

① 申請人(外国人本人)に関する要件

  • 18歳以上であること
  • 母国に帰国後、日本で修得した技術や知識を活かす業務に就く予定があること
    (「日本で学んだことを母国に持ち帰る」という目的を証明するため、母国の所属企業からの復職証明書などが必要です)
  • 母国において、修得しようとする技術に関連する業務に従事している(または予定がある)こと
  • 日本で修得しようとする技術が、単純作業の反復によって身につくものではないこと
    (専門的・技術的な内容であることが求められます)

② 受入機関(日本企業)に関する要件

  • 研修を適切に実施するための設備・体制が整っていること
  • 研修生の生活保障(宿泊施設の確保、生活費の支給など)を行うこと
  • 研修生の帰国旅費(航空券代など)を確保していること
  • 研修指導員を配置すること
    (指導員は、修得しようとする技術について「5年以上の実務経験」を持つ常勤の職員でなければなりません)
  • 生活指導員を配置すること
    (研修生が日本でトラブルなく生活できるよう、生活面のサポートをする担当者が必要です)
  • 過去に外国人の受け入れに関して不正行為を行っていないこと

③ 「実務研修」を行う場合の追加要件

座学だけでなく、実際の業務を通じて学ぶ「実務研修」を行う場合は、上記①②に加えて、以下の要件をすべて満たす必要があります。ここが最もハードルが高い部分です。

  1. 申請人(外国人)が、外国の機関(企業)の「常勤の職員」であること。
  2. 外国の機関(企業)から日本の受入機関へ「派遣」される形式であること。
  3. 受入機関が、過去3年以内に研修生を受け入れた実績があり、かつ不正行為等がないこと(またはそれに準ずる優良な機関であること)。
  4. 「実務研修」の時間が、研修時間全体の「3分の2以下」であること。
    (例えば、1年間の研修プログラムを組む場合、最初の4ヶ月は座学や見学のみの「非実務研修」とし、残りの8ヶ月で「実務研修」を行うといった配分にする必要があります)

つまり、「現地で採用したばかりのスタッフ」や「自社とは全く関係のない海外の会社の人」を呼んで、いきなり現場で実務研修をさせることは不可能です。原則として、「海外の子会社や合弁会社の社員」「取引先企業の社員」を日本に派遣して受け入れる、という形になります。

申請準備からビザ取得・来日までの流れ

では、実際に在留資格「研修」を取得し、研修生が来日するまでのプロセスを見ていきましょう。準備にはかなりの時間がかかりますので、来日希望時期の半年前くらいから動き出すのが理想的です。

ステップ1:研修プログラムの策定

まずは、「誰に」「何を」「どのくらいの期間」「どのように」教えるのか、綿密な研修計画を立てます。実務研修と非実務研修の時間配分、指導員の選定、座学のカリキュラムなどを具体的に決めます。ここが曖昧だと、審査の過程で「労働力の確保が目的ではないか」と疑われてしまいます。

ステップ2:必要書類の収集・作成

研修ビザの申請には、非常に多くの書類が必要です。

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 研修計画書(日ごとのスケジュールや内容を詳細に記載したもの)
  • 受入機関に関する資料(登記簿謄本、決算書、会社案内など)
  • 研修生の所属機関(外国企業)に関する資料(会社案内、在職証明書など)
  • 派遣に関する協定書・契約書(日本企業と海外企業の間で交わす、研修の目的や費用負担等に関する契約書)
  • 研修指導員・生活指導員に関する資料(履歴書や在職証明書)
  • 滞在中の経費支弁に関する資料(研修手当の支給基準や、宿泊施設等の契約書)

※これらはあくまで一例であり、ケースによって求められる書類は異なります。

ステップ3:出入国在留管理局への申請

準備した書類をまとめ、受入機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理局へ「在留資格認定証明書交付申請」を行います。審査には通常1ヶ月〜3ヶ月程度かかります。

ステップ4:在留資格認定証明書の交付〜海外でのビザ申請

無事に審査を通過すると、「在留資格認定証明書(COE)」が交付されます。この証明書(原本またはデータ)を海外にいる研修生本人に送ります。研修生は、母国にある日本大使館・領事館へ赴き、この証明書を提示して「査証(ビザ)」の発給申請を行います。

ステップ5:来日・研修スタート

パスポートに査証(ビザ)が貼り付けられたら、いよいよ来日です。日本の空港で入国審査を受け、パスポートに「研修」の証印(シール)が貼られ、在留カードが交付された段階で、正式に研修をスタートすることができます。

よく検索される疑問と注意点(Q&A)

ここでは、在留資格「研修」を検討されている企業様やご担当者様からの想定される疑問について、実務の観点からお答えします。

研修ビザの期間はどのくらいですか?

法令上、在留期間は「1年」「6ヶ月」「3ヶ月」のいずれかが付与されます。一般の日本企業が受け入れる場合、研修期間は最長で「1年」とお考えください。1年を超えて研修を継続することは原則として認められません。

研修が終わった後、そのまま日本の会社に就職(就労ビザへ変更)できますか?

原則としてできません。
在留資格「研修」は、「日本で学んだ技術を母国に持ち帰り、活かすこと」を大前提としたビザです。そのため、研修終了後に「そのまま日本の会社で働きたいから『技術・人文知識・国際業務』などの就労ビザに変更したい」と申請しても、「当初の目的(母国への技術移転)に反する」として許可されません。 研修終了後は、必ず一度母国へ帰国し、そこで技術を活かしていただく必要があります。もし将来的に日本で雇用したい場合は、本国に帰国して一定期間業務に従事した後に、改めて就労ビザの申請を行うなどの手順を踏む必要があります。

研修生と一緒に、配偶者や子供を呼ぶことはできますか?

できません。

在留資格「研修」には、家族を帯同するための「家族滞在」ビザの付与は認められていません。研修期間中は単身で日本に滞在していただくことになります。

研修生が休日や夜間にアルバイトをすることは可能ですか?

できません。
「研修」は就労が認められていないビザです。留学生などが取得する「資格外活動許可(週28時間以内のアルバイト許可)」を受けることもできません。もし研修生がアルバイトをした場合、不法就労となり、研修生本人は強制送還、受け入れた企業やアルバイト先も厳しい罰則を受けることになります。

コストを抑えるために、宿泊施設は社員の自宅の空き部屋でもいいですか?

受入機関には、研修生が健康で文化的な生活を送れるよう「適切な宿泊施設」を確保する義務があります。社員の自宅の空き部屋であっても、プライバシーが守られ、十分な広さと設備(冷暖房、寝具、風呂、トイレ等)が整っており、無償または常識的な範囲内の家賃で提供されるのであれば認められる可能性があります。しかし、環境が劣悪であったり、高額な家賃を研修手当から天引きするような行為は認められません。アパートやマンスリーマンションを法人契約して提供するのが最も確実でトラブルの少ない方法です。

まとめ:在留資格「研修」は「計画とコンプライアンス」が命

ここまで、在留資格「研修」について詳しく解説してきました。要点をまとめます。

  • 労働ではなく「学び」が目的のビザであり、給料(賃金)の支払いは不可(実費補助の研修手当は可)。
  • 実務研修(実際の業務に触れる研修)を行うには、海外の常勤職員であることや時間割合などの厳しい要件がある。
  • 最長1年で、研修後は必ず母国へ帰国して技術を活かさなければならない(そのまま日本での就労は原則不可)。
  • アルバイトは一切禁止。

在留資格「研修」は、海外の有能な人材に自社の技術や企業理念を伝え、将来のグローバル展開の強力なパートナーを育成するための素晴らしい制度です。

しかし、その一方で、「安価な労働力」として悪用されることを防ぐため、入管の審査は非常に厳格に行われます。研修スケジュールと内容が一致しているか、非実務研修と実務研修の割合は法律の範囲内か、研修手当の額は妥当かなど、提出する「研修計画書」をはじめとする膨大な書類の整合性が細かくチェックされます。

少しでも「労働の要素が強い」と判断されれば、ビザは不許可となってしまう可能性があります。また、万が一運用を間違えて不法就労状態になってしまった場合、企業の社会的信用は失墜し、数年間にわたって外国人の受け入れが一切できなくなるという致命的なダメージを負いかねません。

「自社のケースは研修ビザに当てはまるのか?」
「就労ビザや特定技能など、他のビザの方が適しているのではないか?」
「審査に通る適切な研修計画書の作り方がわからない」

このようなお悩みやご不安がある場合は、専門家の力を頼るのが最も安全で確実な選択です。

「海外のスタッフを日本に呼びたい」とお考えの企業様は、ぜひ一度、WILL行政書士事務所の無料相談をご利用ください。貴社のグローバルな事業展開を、確かな法的知識で強力にバックアップいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

WILL行政書士事務所 代表
石川県金沢市出身・在住の申請取次行政書士。
元技能実習生監理団体の職員で、自身も国際結婚を経験。
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