日本で生活する外国人の方々の中でも、韓国籍や朝鮮籍の方々は歴史的な背景もあり、特別な立場にあるケースが見られます。日本の大学を卒業して就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)で活躍されている方や、日本人と結婚して生活基盤を築いている方、そして日本で生まれ育った特別永住者(在日韓国人・朝鮮人)の方まで、そのバックグラウンドは実に多様です。
長く日本で暮らす中で、「将来はずっと日本で生きていきたい」「家族と一緒に日本国籍を取得したい」と考え、帰化申請を検討される方は非常に多くいらっしゃいます。しかし、いざ手続きを始めようとすると、「自分は帰化できるのか?」「本国の書類はどうやって集めればいいのか?」といった悩みに直面する方が少なくありません。
実は、韓国籍の方の帰化や在留資格(ビザ)申請には、他の国籍の方とは大きく異なる「韓国特有のルールや書類」が存在します。
本記事では、国際業務を専門とするWILL行政書士事務所が、韓国籍の方に特化した帰化申請のポイント、特有の必要書類、そしてよくあるお悩みとその解決策について、専門家の視点から詳しく解説します。
帰化申請の第一関門!韓国特有の「家族関係登録制度」とは
帰化申請を始める際、まず壁となるのが「本国(韓国)の書類収集」です。韓国籍の方の申請において最も特徴的なのは、本国の戸籍制度が大きく変わっている点です。
韓国では2007年12月末をもって従来の戸籍制度が廃止されました 。そして、2008年1月からは新しい「家族関係登録制度」が開始され、本人を基準とする5つの事項に関する登録がされるようになりました 。この新しい制度により、従来の戸籍謄本の代わりに、以下の5種類の証明書が発行されることになりました 。
- 家族関係証明書
- 基本証明書
- 婚姻関係証明書
- 入養(養子縁組)関係証明書
- 親養子入養関係証明書
また、2016年11月の法改正により、これらの証明書は「一般証明書」「詳細証明書」「特定証明書」の3種類に細分化されました 。日本の帰化申請においては、現在の事項だけでなく過去の履歴等もすべて記載されている「詳細(詳細証明書)」を取得する必要があります 。
帰化申請の際には、現在の身分関係を証明する上記の証明書だけでなく、過去の「除籍謄本」の取得も必要となります 。戸主が変わったり、転籍や分籍をすると新しい戸籍が編製されているため、人によっては数冊もの除籍謄本を取得する必要が生じる場合があります 。
「登録基準地」が分からない場合の対処法
この過去の除籍謄本を取得するためには、韓国の「登録基準地」(日本の本籍地のようなもの)と、「戸主」(日本の戸籍筆頭者のようなもの)の情報が分からないと取得できません 。
しかし、日本で生まれ育った在日韓国人の方の中には、ご自身の登録基準地がわからないという方も少なくありません 。そのような場合には、まず基本証明書などの証明書類を取得し、登録基準地を確認することをお勧めします 。
あるいは、出入国在留管理庁から「閉鎖外国人登録原票」を取り寄せて確認するという方法もあります 。閉鎖外国人登録原票の中にある「国籍の属する国における住所又は居所」という欄を確認すると、韓国の方の場合は原則としてここに登録基準地が記載されています 。

韓国書類の取得場所と「翻訳」の厳格なルール
「韓国の書類は、わざわざ韓国まで行って取らなければならないの?」と不安に思う方もいらっしゃいますが、その必要はありません。現地の役所に郵送で請求する必要もありません 。日本にある韓国領事館で韓国書類がすべて取得可能です 。領事館へ直接行くことができない方は、韓国領事館へ郵送でも請求できます 。
ただし、ここで非常に重要なルールがあります。取得した韓国本国書類は、必ず日本語に翻訳しなければなりません 。翻訳は必須であり、翻訳書類には翻訳者の署名と捺印が必須となります 。在留資格、帰化申請における翻訳は、地名や名前の読み方の少しの違いが審査に影響するため、高い正確性が求められます。ご自身で翻訳できない方は、翻訳会社や帰化を専門にする行政書士事務所に依頼する必要があります 。
特別永住者(在日韓国人・朝鮮人)の「簡易帰化」のポイント
日本で生まれ育った特別永住者(在日韓国人・朝鮮人など)の方については、一般的な外国人の方に比べて、帰化の条件が一部緩和されています。これを「簡易帰化」と呼びます 。
簡易帰化は、日本国民と血縁関係を有するか、あるいは日本と一定の地縁関係を有する場合で現在日本に居住している外国人について、「居住要件」などを緩和するものです 。例えば、「日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの」に該当する場合などが挙げられます 。
さらに、特別永住者の方の場合、帰化申請の手続きにおいて「帰化の動機書」の作成が免除されています 。帰化したい動機は明らかであり、日本語の文章が書けるかどうかをテストする必要がないからでしょう 。
また、よくある質問として、「韓国の兵役を終わらせないと帰化できませんか?」というものがありますが、日本生まれの在日韓国人、特別永住者の方は、兵役は関係ありませんので帰化OKです 。
「朝鮮籍」の方の帰化申請はどうなる?
在日韓国人・朝鮮人の中には、「韓国籍」ではなく「朝鮮籍」のままの方もいらっしゃいます 。朝鮮籍の方の場合、韓国の戸籍がありませんので、本国書類がかなりの割合で取れません 。パスポートも臨時パスポートしかつくれない人が多いです 。
朝鮮籍の方は、韓国の本国書類が取れない場合は用意することができないので、取れないものは取れないということで免除になることがほとんどです 。つまり、朝鮮籍だからといって帰化申請できないわけではありません 。この場合は、日本で集められる書類だけで申請を進めていきます 。
朝鮮籍から一度韓国籍に変更してからの帰化申請という流れにしなくても、朝鮮籍で本国書類なしのままで日本国籍を取得できるケースがほとんどです 。通常のケースより日本国内で集める書類が多くなる場合が多いですが、本国戸籍がなくても、日本の書類だけで基本的には申請を進められるということを覚えておいてください 。
一般の韓国人就労者・配偶者の方の帰化のハードル
特別永住者以外の方、例えば韓国の大学を卒業して日本の企業で働く方(技術・人文知識・国際業務ビザなど)や、日本人と結婚した韓国人の方(日本人の配偶者等ビザ)の帰化申請についても注意点があります。
日本人と結婚している外国人の方も、簡易帰化の要件に当てはまります 。日本人と結婚している外国人は、住居要件が少し緩和されます 。通常、一般的な外国人の方の住居要件は、5年以上日本に住んでいることですが、日本人と結婚している外国人は、「引き続き3年以上日本に住所を有し、現在も日本に住所を有していること」に緩和されます 。
ただし、簡易帰化で要件のハードルが下がっているとはいえ、書類上の手続きが簡易になっているとは言えません 。書類作成に関してのボリュームの多さは、一般の外国人とほぼ同じかそれ以上になります 。
「素行要件」と「生計要件」の厳格な審査
在日の方や一般の韓国人の方が共通して気を付けるべきポイントとして、「素行要件」と「生計要件」の確認が必要です 。
素行要件については、簡潔にいえば、真面目な人かどうかということです 。具体的には、きちんと税金と年金を払っていること、重大な交通違反や前科がないこと、の2つです 。近年は年金保険の加入状況、保険料の支払い状況についても厳しく審査が及びます 。
生計要件に関しては、申請人自身または同居の親族の収入や資産で生活できることが求められます 。借金があっても、普通に返せる額の範囲内であれば大丈夫です 。自己破産級の借金でなければ問題はありません 。もちろん、自宅不動産のローンや自動車のローンも、普通に返済中であれば問題ありません 。
挫折しやすい「書類作成」と法務局の厳格なルール
帰化申請では、申請者が最も苦労するのが書類作成です 。法務局への提出書類は入管へのビザ申請とは全く異なる厳格なルールがあります。
例えば、「履歴書その1」という書類がありますが、申請者が生まれてから現在までの住所歴、学歴、職歴、身分事項の変更などを全て時系列に並べて書く必要があります 。学校を卒業した際の履歴には「同校卒業」と書かないといけない決まりになっていますし、中退した場合は「同校中退」となります 。職歴に関しては、本国での職歴や日本に入国した後に行ったアルバイト歴など全てを記載してください 。
びっくりするほど独特な書式なので、法務局のルールに従った体裁を外国人の方が自力で整えるのは難易度が高いのです 。また、文字を間違って記入してしまった場合は、修正テープ等を使用することが認められていません 。二重線を引いて正しい文字を余白に書く必要があります 。そのため、自己申請される方は、初回でいきなり清書するのは避け、鉛筆で下書きし、法務局の相談の際に案文を職員に一度見てもらうことをお勧めします 。
帰化の「動機書」の書き方
特別永住者以外の方(就労ビザや配偶者ビザの韓国籍の方)は、「動機書」を自筆で作成する必要があります。パソコンでの入力は不可で、原則として申請者が自筆で作成しなければなりません 。
帰化の動機書は、過去、現在、未来に分けてポイントごとに記載するとよいでしょう 。
- 過去
どこで生まれ育ち、どんな生活を送っていたのか 。 - 現在
なぜ来日したのか、現在の生活状況について、なぜ帰化したいと思ったのか、義務を果たしているか等 。 - 未来
帰化後はどのようなことをしたいのか、社会貢献の取り組みについて、帰化意思について 。
許可された後にも注意!帰化後の手続き
見事、帰化が許可された後にも、いくつか重要な手続きが待っています。
帰化後の手続きで一番最初にやっていただきたいことは、実は出入国在留管理局(入管)に在留カードを返納することです 。中長期在留者または特別永住者でなくなったときは、「失効した日から14日以内」に入管に在留カード等を返納しなければならないことになっています 。期限内に返納しないと罰金に処せられることがあります 。
また、市区町村役場での手続きにおいて、もし同時に配偶者の帰化の届出をする場合や、日本人配偶者がいる場合等で配偶者の欄に記入する必要がある方は、当該配偶者の捺印も必要となります 。この欄に捺印がないと受付をしてもらえません 。新しい苗字の印鑑を既にお持ちの場合は、その印鑑を押していただいて結構ですし、まだ作成していない場合は、新しい氏名の横にカッコ書きで従前の氏名を書き、従前使用していた印鑑を押しても問題ありません 。

まとめ:専門家のサポートで確実な帰化・ビザ申請を
帰化申請の手続きは、申請者の人生を左右する一大イベントです。特に韓国籍の方の場合、家族関係登録制度に基づく5種類の証明書(詳細)の取得、登録基準地の特定、除籍謄本を遡る複雑な作業、そして厳格な日本語翻訳など、非常に多くの手間と専門知識が求められます。
慣れていない人が自力で帰化申請をしようとすると、最初の相談から書類受付までに1年以上かかってしまうことも珍しくありません 。1年間、会社員としての業務をこなす傍ら、土日などを使って書類収集や書類作成を行い、平日に有給休暇を年に何度も取って法務局に通わなければならないため、途中で挫折してしまう方もいます 。
「確実に許可を取りたい」「何度も法務局や役所に通う時間がない」という方は、ぜひ国際業務を専門とする行政書士にご相談ください。
WILL行政書士事務所では、韓国籍の方特有の書類収集や翻訳手配、複雑な履歴書・動機書の作成サポートまで、帰化・ビザ申請をトータルでバックアップいたします。韓国の法制度や最新の審査傾向をしっかりと確認し、あなたに合わせた最適なプランをご提案します。
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