【行政書士が解説】日本の難民認定手続のリアルと申請を成功に導くための条件

「母国で政権批判をしたことで目をつけられ、帰国すれば逮捕されるかもしれない」

「自身の性的指向を理由に、国や周囲の人間から命を狙われている」

母国での迫害から逃れ、わらにもすがる思いで日本へたどり着いた外国人の方の中には、このような深い悩みと恐怖を抱えている方が少なくありません。日本で安全に暮らしたいと願い「難民認定申請」を検討しているものの、手続の全体像や認定される可能性が分からず、不安な日々を過ごしているのではないでしょうか。

本記事では、国際業務専門の行政書士が、日本の難民認定手続のリアルな現状、手続の流れ、そして「難民」として認められるために最も重要となる条件について、最新の法制度に基づき詳しく解説します。

目次

日本の難民認定制度の現状とリアルな数字

日本は難民条約の加入国であり、難民を保護する責務を負っています 。入管法(出入国管理及び難民認定法)においても難民条約上の難民の定義を採用しており、難民認定手続が定められています

しかし、日本の難民認定制度は国内外からその厳格な運用を批判されており、実際に難民として認定される方は非常に少ないのが現実です 。具体的な数字を見ると、1982年に難民認定申請手続が開始されてから2024年(令和6年)までの43年間で、難民認定申請の合計数は117,860人に上りますが、難民として認定された者の合計数はわずか1,610人にすぎません 。認定率はわずか1%程度にとどまっています 。

また、審査結果が出るまでには長い期間を要します

  • 2024年(令和6年)の一次審査の平均処理期間は約22.3月となっています 。
  • 不認定となった後の不服申立て(審査請求)の平均処理期間は約12.6月です 。
  • 難民該当性の高い事案ほど、著しい長期化の傾向にあるとの報告もなされています 。

このように、通常長い時間がかかる上に、ほとんどの人が難民として認定されないという厳しい運用状況にあります 。しかし、昨今の世界情勢を踏まえ、わずかながらではありますが認定数が増えている兆しも見られます 。適切な準備をして真摯な審査を求めていくことが何より大切です

難民認定手続の具体的な流れ(申請から結果まで)

難民認定申請を希望する場合、どのようなプロセスを辿るのかを具体的に見ていきましょう。

1. 申請手続きと必要書類

難民認定申請は、原則として申請者本人が、その住所又は現在地を管轄する地方出入国在留管理局に出頭して行う必要があります

  • 所定の難民認定申請書(本人が記入したものでなければ受け付けられない取扱いとなっています)を提出します 。
  • 難民該当性を基礎づける事情を示す陳述書や、迫害のおそれを基礎づける出身国情報等の資料、写真二葉を提出します 。
  • 旅券(パスポート)や在留カード等を提示します 。旅券等が提示できない場合は、その理由を示した文書を作成して提出します 。

2. 案件の振分け(4つの類型)

現在の運用では、申請が受理されると2か月以内に以下の4つの類型(A・B・C・D)に分類され、振り分けられます 。この分類は申請者本人には通知されません

3. インタビュー(調査)

難民調査官が申請者に出頭を求め、インタビューを行います 。事案に応じて1回から数回程度行われます 。ただし、近時ではB案件やC案件に振り分けられると、インタビューを経ずに不認定処分が出されることもあります

不服申立て(審査請求)と在留特別許可の分離

一次審査で難民不認定の処分を受けた場合、通知日から7日以内に「審査請求」をして再審査を求めることができます

審査請求手続のポイント

  • 審査請求手続では、民間出身の難民審査参与員が審理員として審査に関わります 。
  • 「申述書」を提出し、審査請求の理由を詳細に記述します 。
  • 直接意見を述べる「口頭意見陳述」の機会を求めることができ、活用することが望ましいとされています 。
  • 審査請求が棄却された場合には、最終的に行政訴訟手続で争うことになります 。

令和5年入管法改正による大きな変更点

ここで非常に重要なのが、令和5年(2023年)の入管法改正による制度の変更です。
以下の内容をご確認ください。

難民として認められるための「条件」とは?

そもそも、どのような人が「難民」として認められるのでしょうか。難民条約第1条A(2)では、難民の定義を以下のように定めています

「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者…」

難民認定を勝ち取るためには、以下の要素を満たしていることを証明しなければなりません。

① 5つの理由のいずれかに該当すること

「人種」「宗教」「国籍」「特定の社会的集団の構成員であること」「政治的意見」のいずれかが理由でなければなりません 。

② 「迫害」を受けるおそれがあること

日本の法務省はこれまで、迫害を「通常人において受任し得ない苦痛をもたらす攻撃ないし圧迫であって、生命又は身体の自由の侵害又は抑圧」と狭く限定して解釈してきました 。 しかし近時の裁判例では、「生命若しくは身体の自由に匹敵する重大な自由の侵害又は抑圧」も含める柔軟な判断や、累積的な差別的措置が生存権侵害レベルに達すれば迫害に該当すると認める判断も出てきています

③ 「十分に理由のある恐怖」であること

単なる抽象的な不安ではなく、客観的な状況により裏付けられた恐怖であることが求められます 。 実務上、「指導的立場になく単なる平メンバーにすぎない」「本国政府から個別に把握されていない」といった理由で不認定とされるケースが多くありました 。しかし、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のハンドブックや近時の裁判例では、必ずしも著名な指導者である必要はなく、無作為な弾圧の対象となるなど「その他大勢の活動家」の一人に過ぎない場合であっても、迫害の恐怖は十分に根拠がある(個別把握は不要である)と判断されています

また、本国から「真正な旅券(パスポート)を取得して合法的に出国した」という事実があったとしても、それが難民該当性を否定する正当な理由にはならないと、UNHCRの指針や多くの日本の裁判例で示されています

LGBT(性的マイノリティ)を理由とした難民認定

「私は同性愛者ですが、難民として認められますか?」というご相談も増えているようです。 法務省が2023年に公表した「難民該当性判断の手引」では、性的マイノリティが難民条約上の「特定の社会的集団の構成員」に該当し得るとの見解を示しています 。

日本で初めて性的マイノリティが難民認定されたのは2018年であり、その後2020年にも認定事例があります 。さらに2023年には、大阪地裁の判決で初めて、同性愛者であることを理由に難民該当性が認められ、不認定処分が取り消されました 。この事案は、同性間の性行為に終身刑を科すウガンダの出身者に関するものであり、裁判所は「同性愛者であることをもって、『特定の社会的集団の構成員であること』に該当する」と明確に判断しました

本国で迫害を避けるために自身の性的指向を「秘匿(カミングアウトしていない)」していたとしても、その事実をもって難民資格を否定することはできないとUNHCRのガイドラインにも明記されています 。同性愛行為等を処罰する法令の存在や、実際の逮捕・暴力などの実態を調査し、正確に主張することが重要です

証拠がなくても諦めない!「供述の信憑性」を高める方法

難民申請において最大の壁となるのが、「立証」です。 迫害から逃れてきた難民が、自身の恐怖を裏付ける証拠一式を準備して出国することは極めて稀です 。そのため、申請者本人の「供述の信憑性(話の信用度)」が最も重要な評価対象となります

しかし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などのトラウマによって記憶に故障が生じたり、通訳を通すことによる文化的・言語的な誤解が生じたりすることで、供述に矛盾が出てしまうことがよくあります 。 UNHCRハンドブックは、「立証責任は原則として申請者の側にあるけれども、関連するすべての事実を確認し評価する義務は申請者と審査官の間で分担される」としています 。また、申請者の供述が全体として一貫しており、客観的な事実(出身国情報など)と合致している場合は、「疑わしきは申請者の利益に」の原則に基づき、厳格すぎる証拠を求めてはならないとされています

日本の裁判例でも、多少の変遷があったとしても「供述の根幹部分」「核心部分」について一貫性があれば、信憑性を認める傾向にあります 。だからこそ、専門家のサポートを受けながら、出身国情報(客観的資料)とご自身の体験を整理し、論理的かつ一貫した主張を構築することが不可欠です

まとめ:一人で悩まず、専門家にご相談を

日本の難民認定手続は、極めて認定率が低く、審査期間も長引く過酷な制度です 。令和5年の法改正により、在留特別許可の手続が分離され、場合によっては申請中であっても送還の対象となるなど、手続はより複雑で厳格なものとなっています

しかし、悲観する必要はありません。近年の裁判例や国際的なガイドラインの普及により、適切に事情を主張し、出身国情報とすり合わせて立証を行えば、道を切り開くことは十分に可能です 。

この記事が、多くの方にとっての適切な難民申請の一助となれば幸いです。

「手続きの概要はわかったが、難しそうで自分でできる気がしない」
「必要書類の収集や入管の審査官とのやり取りできる自信がない」

そのような方は、ぜひ以下のリンクよりWILL行政書士事務所の無料相談をご利用ください。お問い合わせをお待ちしております。

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この記事を書いた人

WILL行政書士事務所 代表
石川県金沢市出身・在住の申請取次行政書士。
元技能実習生監理団体の職員で、自身も国際結婚を経験。
日本で生活する外国人の方をサポートします!

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