国際結婚をされた方や海外赴任中に出産されたご家族から、
「子どもの国籍はどうなるの?」
「二重国籍のままにしておいても大丈夫なの?」
といったご相談をいただくことがあります。日々の忙しさに追われて手続きを忘れてしまうと、意図せずお子様が日本国籍を失ってしまうこともあるため、不安に感じる方も多いですよね。
この記事では、国際業務を専門とするWILL行政書士事務所が、二重国籍の方の国籍選択のルールや、日本国籍の留保・再取得について、正しい法律知識と手続きの方法をわかりやすく解説いたします。ご自身の状況と照らし合わせながら、ぜひ最後までお読みください。
海外で生まれたお子様の国籍はどうなる?「日本国籍の留保」とは
国際結婚や海外赴任中に外国で生まれたお子様の場合、ブラジルなどのようにその国で出生した者に対して国籍を与える生地主義の国であれば、現地の法律によってその国の国籍を取得することがあります。 一方で日本は、父母両系血統主義を採用しているため、父母のどちらかが日本人であれば、出生により日本国籍を取得します。
しかし、日本は重国籍の発生を防ぎ、その解消を図る政策をとっています。 そのため、国籍法12条では、出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼって日本の国籍を失うと規定されています。 これが「日本国籍の留保制度」と呼ばれるものです。この制度は、国外出生児の重国籍の発生を自然に解消する機能と、実効性を欠く形骸化した日本国籍の発生を防止する機能を有しています。
期限内の手続きが不可欠です
日本国籍を失わないためには、必ず期限内に手続きを行わなければなりません。
- 戸籍法104条1項の定めに従い、出生の日から3か月以内に日本の国籍を留保する旨を届け出る必要があります。
- 届出の方法としては、日本の海外の領事館に置いてある出生届に、留保・不留保の不動文字が印刷されており、必ず意思表示の内容が判るようになっています。また、この出生届は本籍地の市区町村長に直接郵送することも可能です。
もし、出生の日から3か月以内に日本国籍留保をした出生届を提出しなかった場合、出生の日に遡って日本国籍を失い、原則的には外国の単一国籍者となります。この場合、戸籍に記載されることはありませんし、国籍喪失届も不要とされます。
うっかり手続きを遅延してしまった場合の「救済策」
「手続きを忘れて3か月を過ぎてしまった!」という場合、何か救済策はあるのでしょうか。 戸籍法104条3項では、「天災その他責めに帰することができない事由」があれば、国籍留保の届出の期間は、届出をすることができるに至ったときから14日とすると規定されています。 つまり、ご自身に現在もこの「責めに帰することができない事由」が存在していれば、いまだに日本国籍を留保していることになります。
どのような事由がこれに該当するのかについては、事案ごとに判断されます。
「責めに帰することができない事由」として肯定された行政先例等
- ザイール共和国(現コンゴ民主共和国)内の暴動による遅延。
- 日本人母がアメリカ合衆国内の刑務所に服役中に出産したという極めて特異な状況。
- フランス共和国での偶発的な郵送中の事故による紛失。
- 親子関係不存在確認審判の確定を待つ必要性があった事案。
- アメリカ合衆国で医師に「仮出生証明書」への記入を拒否され、保険局からの「出生証明書」の発行も遅れた場合。
- 中華人民共和国でSARS発生のため病院が業務の全てを停止し、出生証明書の発行に時間を要した場合。
「責めに帰することができない事由」として否定された行政先例等
- 在外公館がなかったことや、法令の不知を理由とした場合。
- 日本人母の配偶者である外国人父の祖母および本人の病気等の理由。
- 母の産後の経過不良や日本人配偶者の多忙等を理由とした場合。
上記のように、一般的には「法令の不知や事情不案内」「職務が多忙であった場合」「届出義務者以外の者の事情」のときには、責めに帰することができない事由とは認められていません。近年はビジネス等で海外に赴任される方が増えていますが、法の不知は許さないとする傾向にあるため、海外での出産の際には国籍留保届に十分留意すべきです。
日本国籍を失ってしまった場合の「国籍の再取得」手続き
もし、父母が日本国への出生届に国籍留保の届出をしなかったために日本国籍を喪失してしまった場合でも、一定の条件を満たせば日本国籍を再取得できると聞くと、安心される方もいらっしゃるかもしれません。 このような場合の国籍の再取得については、国籍法17条1項に規定があり、帰化の手続によらないでも法務大臣に届け出ることで簡易迅速に日本国籍の再取得が認められます。
国籍再取得のための3つの要件
法務大臣に対する国籍取得届によって日本国籍を再取得するには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 日本国籍留保をしなかったことによって日本国籍を喪失したこと。
- 国籍法12条の規定によって日本国籍を喪失した者が対象です。
- その者がその後、何らかの理由で他の外国国籍を取得(帰化など)していても、この要件を満たすものと解されています。
- 届出のときに18歳未満であること。
- 18歳未満であればまだ日本社会に適合しやすいし、重国籍による害も生じていないからと考えられています。
- 日本に住所を有すること。
- 生活の本拠を日本に置く意思とそのような生活の事実があれば足りると解されます。
- 国籍法上の住所は適法なものでなければならないので、住所を設定するに適した在留資格の取得が必要になります。
- 外国人の住所は住民票の写しで確認でき、在留カードでどのような在留資格で日本に在留しているかが判ります。また、生活実態については旅券上の出入国記録も大きな手がかりになります。
再取得の手続きの流れ
実際の国籍取得届の手続きは、以下のようなプロセスで進みます。
- 早急に、住所地を管轄する法務局又は地方法務局の長を経由して、法務大臣に対して国籍取得届を提出することになります。
- 法務局にて相談の予約を入れ、予約相談日には届出人の身分関係や居住状況の確認、必要な要件や添付書類等について説明があります。
- 添付書面を含め書面が完備された適法な届出であると判断されれば受付がされます。
- 届出の効力は受付けのときに生じますので、年齢が18歳に迫ろうとしているときには、確実に受け付けられるよう慎重に準備することが求められます。
- 受付されてから実態の審査が行われ、適法と認められれば、国籍取得証明書が届出人に交付されます。
国籍取得証明書が交付されたら、国内にいるときは1か月以内に国籍取得証明書を添付して、本籍地又は所在地の市区町村長に届出をしなければなりません。この届出に基づいて初めて戸籍が作成されます。
二重国籍者の「国籍選択制度」と選択の時期
日本国籍の留保届出がなされた場合などに生じた重国籍の事態の解消は、本人の自由意思に基づく国籍の選択という国籍選択制度によることになります。日本の国籍法は、重国籍者の発生の阻止、解消を図っており、重国籍者に国籍選択の義務を課しています。
選択の期限について
国籍選択制度を有する国は極めて少ないのが現状ですが、日本では国籍法14条1項により、以下の期限内にいずれかの国籍を選択しなければならないと履行期限が定められています。
- 外国及び日本の国籍を有することとなった時が18歳に達する以前であるとき
20歳に達するまでに選択しなければなりません。 - その時が18歳に達した後であるとき
その時から2年以内に選択しなければなりません。
この成年に達したときから2年まで、又は成年後に重国籍となったときから2年までは、熟慮期間とされています。 なお、国籍を選択すべき者が日本又は外国の国籍を喪失するまでは、当該履行期限後でも国籍選択は可能です。
期限を過ぎてしまったらどうなる?法務大臣の催告
もし所定の期間内に国籍の選択をしないでいると、法務大臣は書面で選択を催告することになります。
- 国籍選択の期限を経過した者について、市区町村長は、期限内に選択をしていないと思料する者があるときは、その情報を管轄法務局長等に通知する義務があります。
- 法務大臣は、これから得た情報で国籍選択の催告をします。
- 催告を受けた者は、日本国籍を失いたくない場合、催告の日より原則として1か月以内に日本国籍を選択すればよいことになります。
- 催告を受け、それにもかかわらず選択をしない場合には、日本の国籍を喪失することになります。
どちらの国籍を選ぶ?国籍の選択方法と注意点
国籍を選択する方法には、「外国国籍の選択」と「日本国籍の選択」の2つの道があり、それぞれ手続きが異なります。
① 日本国籍の選択をする場合
日本国籍を選択する場合、国籍法14条2項により2つの方法が規定されています。
- 外国の国籍を離脱する方法
これにより重国籍は解消されます。 - 日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言をする方法
この「日本国籍選択宣言」は戸籍法104条の2に基づきなされます。
日本国籍選択宣言をした後の注意点
上記の「日本国籍選択宣言」によって外国の国籍を当然に喪失するかどうかは、その外国の法規によります。その外国の法規によると日本国籍選択の宣言によって当然に外国の国籍喪失の効果が生じないときは、日本国籍を選択した者は、その外国の国籍の離脱に努めなければなりません。この国籍法16条1項の規定は、一般的には注意規定であり、訓示規定としての意味を有するにすぎないと解されています。
※しかし、日本国籍選択の宣言をした日本国民で外国国籍を喪失していないものが、自己の志望によりその外国の公務員の職に就任した場合において、その就任が日本国籍を選択した趣旨に著しく反すると認められるときは、法務大臣により日本国籍の喪失宣告がなされる場合がありますので注意が必要です。
- 喪失宣告の要件
以下の3つの要件を満たす場合です。- 外国国籍を有する日本国民が日本国籍選択宣言をしたのに、外国国籍を保有し続けていること。
- 自己の志望によってその外国国籍を有しなければ就任することができないような公務員の職に就任したこと。
- その外国の公務員への就任が日本国籍を選択した趣旨に著しく反すること(※)。
- ※「著しく反する」とは
単に機械的、肉体的労働に当たる場合や一時的、臨時的な場合は該当しません。逆に、大臣、国会議員、裁判官、検察官などは、その性質上公権力の行使や公の意思形成に関する場合であるので該当します。国会議員になり外交を専門にしているような場合は、これに該当することになるでしょう。 - 喪失宣告の効果
日本国籍の喪失宣告を受けた者は、官報に告示された日に日本国籍を喪失します。その後、国籍喪失の事実を知った日から1か月以内に国籍喪失の届出をしなければならず、戸籍が消除されることになります。
② 外国国籍の選択をする場合(日本国籍の離脱)
外国国籍の選択をする場合にも、2つの方法があります。
- 外国の法令によりその外国の国籍を選択する方法(国籍法11条2項)
これにより重国籍は解消されます。 - 日本国籍を離脱する方法(国籍法13条)
これによっても重国籍は解消されます。
< 日本国籍を離脱する条件と手続き >
- 日本国憲法22条2項に国籍離脱の自由が規定されており、その具体的規定が国籍法13条です。外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによって日本の国籍を離脱することができます。この対象者は重国籍者に限られています。
- 国籍離脱をするには、離脱の意思能力さえあればよく、行為能力者でなくてよいとされています。
- 実務では本人確認にあたっては旅券、運転免許証、在留カード、住民票の写しなどの提示を求められ、署名が本人のものかどうかを確認することになっています。
- 国籍離脱届が適法にされれば、その届出の時に離脱の効力が生じ、日本国籍を失います。いったん受け付けられた国籍離脱の届出は取り下げることはできないとされていますので、慎重に判断しなくてはなりません。
- 国籍離脱届出をした本人や親族等は、国籍喪失の届出をしなければならないとされています。
なお、日本国籍を離脱した後も日本に住み続けるには、出入国管理及び難民認定法(入管法)に規定される在留資格を取得することが必要となります。在留資格取得許可申請により、元日本人として「永住者」の在留資格を取得することも考えられます。
迷ったら一人で悩まず、専門家にご相談を
国籍に関する手続きは、お子様の将来の人生を左右する非常に重要なものです。
「うっかり期限を過ぎてしまった」
「自分たち家族にとって、どの選択をするのが一番良いのか分からない」
「手続きの書類作成が難しくて進まない」
といったご不安を抱えている方は、決して珍しくありません。法律や実務の運用は複雑であり、ご自身の状況に合わせた慎重な判断と確実な手続きが求められます。
WILL行政書士事務所では、国際業務の専門家が、国籍留保や国籍取得、在留資格の取得など、複雑な手続きを親身にサポートいたします。初回のご相談は無料で承っております。まずは下記のフォームより無料相談をお申し込みください。
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