この記事はこんな人におすすめ!
- 在留資格「経営・管理」の取得を考えている方
- 「経営・管理」ビザの要件や手続きについて確認したい方
- 「経営・管理」ビザの取得に関わる法律の改正について、何が変更になったか知りたい方
「日本で自分の会社を立ち上げたい!」
「日本の優れた技術やサービスを活かして、新しくビジネスを始めたい!」
「海外にある本社の日本支店を任された」
そんな熱い思いを抱いて日本での起業やビジネス展開を目指す外国人の方にとって、最初の、そして最大の関門となるのが在留資格「経営・管理」(旧:投資・経営ビザ)の取得です。
これまで、日本の「経営・管理」ビザは、資本金500万円を用意すれば比較的取得しやすいと言われてきました 。しかし、令和7年(2025年)10月16日施行の法改正により、そのルールが根底から覆る歴史的な大激変を迎えました。
「500万円あれば起業できると聞いていたのに、今は3,000万円必要なの!?」
「日本語のテストに合格していないと社長になれないって本当?」
「すでにビザを持っているけれど、次回の更新はどうなるの?」
このような不安や混乱の声が、多く聞かれるようになっています。
この記事では、国際業務を専門とするWILL行政書士事務所が、最新の法改正情報を踏まえ、「経営・管理」ビザの取得要件、申請準備から取得までの具体的な流れなどについて、専門用語をできるだけ使わずに徹底的に解説します。
これから日本で起業を目指す方はもちろん、すでにビザをお持ちの経営者の方も、ぜひ最後までお読みいただき、今後の事業戦略にお役立てください。
そもそも在留資格「経営・管理」とは?
在留資格「経営・管理」とは、文字通り、日本国内で事業の「経営」を行う、または事業の「管理」に従事する外国人の方のためのビザです 。
一昔前は「投資・経営」ビザと呼ばれ、外国人や外国法人が出資(投資)する外資系企業に限定されていました。しかし、法改正により「経営・管理」へと名称が変わり、現在では外資系・日系を問わず、日本での経営・管理活動が広く対象となっています 。
対象となる3つの活動パターン
具体的にどのような人がこのビザの対象になるのでしょうか?大きく分けて以下の3つのパターンがあります。
- 自分で新しく事業を立ち上げる(創業者・起業家
日本で新しく会社を設立し、自ら出資して代表取締役などの経営トップに就任するケースです。 - すでにある事業に経営者として参画する(買収・事業承継)
日本にすでに存在している会社の株式を買い取るなどして、経営陣として参画するケースです 。 - 経営者に代わって事業の管理を任される(雇われ社長・支店長・工場長)
自らは出資していなくても、海外本社の日本支店長として派遣されたり、企業に雇用されて事業の管理業務(部長、工場長など)を任されたりするケースです 。
つまり、自腹を切って起業する「オーナー社長」だけでなく、経営を委任された「雇われ社長」や「管理者」も、このビザの対象になるということです。
令和7年(2025年)10月施行の歴史的大改正
ここからが本題です。在留資格「経営・管理」は、令和7年(2025年)10月16日に施行された上陸基準省令の改正により、過去に例を見ないほど要件が厳格化されました。
なぜこのような大改正が行われたのでしょうか?
その背景には、「形だけ会社を設立してビザを取得し、実際にはまともな経済活動を行わない(いわゆるビザ取り目的のペーパーカンパニー)」を徹底的に排除し、「日本国内の労働市場に真の雇用を生み出し、実体のある経済効果をもたらす、財務基盤の強固な外国人経営者」だけを厳選して受け入れるという国の方針があります。
旧法と新法の決定的な違いを、分かりやすく比較してみましょう。
比較表:旧基準と 新基準(2025年10月16日以降)
| 審査項目 | 旧基準 (2025年10月15日まで) | 新基準 (2025年10月16日以降) |
| 資本金・投資総額 | 500万円以上 (または常勤職員2名の雇用で免除可) | 3,000万円以上 (必須要件に引き上げ) |
| 常勤職員の雇用 | 資本金要件を満たせば0名(社長1人のみ)でも可 | 常勤職員1名以上の雇用が必須 |
| 経営者の学歴・経験 | 経営者(出資者)には特段の明示的な法定要件なし | 関連分野の修士以上の学位、または3年以上の経営・管理経験 |
| 語学要件(日本語) | 特段の定めなし | 本人または常勤職員がJLPT N2(CEFR B2)相当以上 |
| 事業計画の評価 | 申請者や行政書士が作成し、そのまま入管へ提出 | 中小企業診断士・公認会計士・税理士による事前確認が必須 |
| 事業用オフィスの確保 | 状況に応じ、自宅兼事務所も柔軟に許可される傾向があった | 独立した事業所が必須。自宅兼事務所・バーチャルは原則不可 |
ご覧の通り、単なるマイナーチェンジではなく、「全く別の厳しいビザに生まれ変わった」と言っても過言ではありません。
それでは、新基準の「5つの絶対条件」について、さらに深掘りして具体的に解説していきます。
「経営・管理」ビザ取得のための5つの絶対条件(最新版)
令和7年10月以降に新しく「経営・管理」ビザを取得するためには、以下の5つの要件をすべて同時に満たす必要があります。
条件①:資本金(投資総額)3,000万円以上という強固な財務基盤
旧制度では「500万円以上」だったハードルが、なんと6倍の「3,000万円以上」へと劇的に引き上げられました。
株式会社や合同会社などの法人を設立する場合、商業登記簿に記載される資本金(または出資の総額)が3,000万円以上であることが求められます。
個人事業主として申請する道も残されていますが、その場合でも、事業所の確保費用、設備投資、従業員の給与など、日本国内で事業のために投下した資金の総額が3,000万円以上であることを、客観的な証拠(領収書や財務資料)で立証しなければなりません。
注意!「お金の出所(資金形成過程)」は徹底的に調べられます!
「とりあえず知人から3,000万円借りて、口座に入れておけばいいだろう」という安易な考えは通用しません。入管は、その資金が「誰の、どのようなお金なのか」「合法的に形成されたものか」を厳格に審査します。
- 留学生や就労ビザからの起業の場合
過去のアルバイトや給与の収入に見合わない大金が突如口座に現れた場合、「違法な長時間労働(オーバーワーク)で稼いだのではないか?」「見せ金(審査のためだけに借りたお金)ではないか?」と疑われます。 - 親族から援助を受けた場合
親族の収入証明書や、親族の口座から申請人の口座への海外送金記録など、お金の流れを透明に証明する必要があります。
条件②:日本人等の「常勤職員」1名以上の雇用が必須
旧制度では、資本金500万円を用意すれば、社長1人だけの「スモールビジネス」でもビザの取得が可能でした。しかし新制度では、日本国内の労働市場への貢献として、「1人以上の常勤職員の雇用」が絶対条件となりました。
注意!! 雇える人の「属性(ビザの種類)」に厳しい制限があります!
ここで雇う「常勤職員」は、誰でもいいわけではありません。以下の身分を持つ人に限定されています 。
- 日本人
- 特別永住者
- 「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」のビザを持つ外国人
つまり、「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」といった就労ビザの外国人や、アルバイトの留学生を雇用しても、この「常勤職員1名」の要件にはカウントされません。日本にすでに生活基盤を持つ人材を雇用することが強制されているのです。
条件③:経営者個人の「学歴・経験」と「日本語能力(N2レベル)」
これまでは「箱(会社や資金)」の要件が中心でしたが、新法では経営者という「人」の能力も厳しく問われるようになりました。
- 専門性の担保(学歴または経験)
経営管理や事業に関連する分野で、大学院レベルの学位(博士、修士、MBA等の専門職学位)を持っていること、あるいは事業の経営・管理について3年以上の実務経験があることが求められます。 - 日本語能力の要件化
日本国内で法律を守り、円滑に事業を運営する前提として、申請者本人、または雇用する常勤職員のいずれかが「高度に自立して日本語を理解し、使用できる能力」を持っていることが必須となりました。具体的には、日本語能力試験(JLPT)の「N2」相当以上、またはCEFRの「B2」レベル以上です。もし外国人社長が日本語を話せない場合、N2以上の日本語力を持つ日本人等のスタッフを「常勤職員」として雇うことでカバーできます。
条件④:物理的に独立した「事業所」の確保
事業を行うための実体のあるオフィスや店舗が、日本国内に確保されている必要があります 。審査では、以下の2点が厳格にチェックされます 。
- 経済活動が一定の区画を占めて行われていること
- 人や設備があり、継続的に業務が行われていること
注意!!! こんなオフィスは不許可になります!
- バーチャルオフィスや短期レンタルスペース
実体と継続性がないためNGです。 - 自宅兼オフィス
旧制度では柔軟に認められるケースもありましたが、現在は原則不可です。どうしても自宅を兼ねる場合は、「大家さんが事業利用を同意していること」「生活空間と事業スペースが壁やドアで完全に区切られていること」「公共料金の支払いが分かれていること」など、極めて高いハードルを越えなければなりません 。 - 名義貸し・承諾なし
過去の不許可事例として、従業員名義のアパートを大家の許可なく事務所として申請し、不許可になった悪質なケースがあります。賃貸借契約書の使途は必ず「事業用・店舗用・事務所用」でなければなりません。
条件⑤:専門家による「事業計画書」の客観的評価の義務化
ビジネスが成功し、継続していく見込みがあるかを示す「事業計画書」は、審査において最も重要な書類です 。
旧制度では、申請者や行政書士が作成したものをそのまま提出していましたが、新制度では、その計画が机上の空論ではないことを担保するため、外部の専門家(税理士、公認会計士、中小企業診断士)による確認・評価を受けた事業計画書を提出することが法的に義務付けられました。
「なぜその事業なのか」「誰にどうやって売るのか」「毎月の経費と利益の予測は?」といった内容を、プロの目から見て合理的かつ実現可能であると証明しなければなりません。
申請準備からビザ取得までの具体的な流れ
要件が理解できたところで、実際にどのような手順でビザを取得するのかを見ていきましょう。申請人が「海外にいるか」「すでに日本にいるか」でアプローチが異なります。
パターンA:海外から呼び寄せる場合(「4ヶ月ビザ」の活用)
海外に住んでいる外国人が日本で起業しようとしたとき、最大の壁となるのが「ニワトリと卵」の問題です。
会社を設立するには資本金を振り込む日本の銀行口座が必要ですが、日本の住民票がない外国人は口座を作れません。また、オフィスを借りるにも住民票や日本の連絡先が求められます。
この問題を解決するために活用されるのが、「4ヶ月の経営・管理ビザ」です 。
- 事業計画書や定款案の作成
海外にいながら、日本での起業に向けた事業計画書(専門家の評価付き)や定款の案を作成します。 - 在留資格認定証明書交付申請
日本の入管へ「経営・管理(4ヶ月)」のビザを申請します。 - 入国と住民登録
4ヶ月のビザで来日し、役所で住民票を作成します。 - 銀行口座開設・資本金払込・登記
住民票をもとに銀行口座を開設し、海外から3,000万円を送金して資本金とします。その後、法務局で会社の設立登記を行います。 - 在留期間の更新申請
4ヶ月の期限が切れる前に、会社が正式に設立された証拠(登記簿謄本など)を提出し、「1年」などの通常のビザへの更新申請を行います。
4ヶ月という非常に短い期間内に、3,000万円の資金移動、口座開設、不動産契約、登記手続きのすべてを完了させなければなりません。事前の綿密なスケジュール構築と、日本国内の専門家(行政書士や司法書士)との緊密な連携が不可欠です。
パターンB:すでに日本にいる場合(就労ビザ等からの変更)
日本で「技術・人文知識・国際業務」などで働いている方が独立起業する場合の流れです。
- 定款作成・資本金払込・登記:すでに日本に住民票や口座があるため、先に会社設立の手続きをすべて完了させます。
- 許認可の取得:飲食店や不動産業など、事業に必要な許認可を所管の役所から取得します。
- 在留資格変更許可申請:会社が完全に稼働できる状態になった後に入管へビザの変更申請を行います。
留学生の起業の場合
留学生が起業する場合、学校の授業を疎かにして起業準備に没頭したり、オーバーワーク(週28時間以上のアルバイト)で資金を稼いでいたりすると、「素行不良」とみなされビザが不許可になるリスクがあります 。
救済策にして最強のルート:国家戦略特区「スタートアップビザ」の活用
「アイデアと技術はあるが、最初から3,000万円もの資金を用意するのは不可能だ…」 そんな起業家を救うのが、国家戦略特別区域法に基づく「外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)」です 。
これは、新制度下において事実上唯一の「経営・管理ビザへの架け橋」となる重要な制度です。
- 起業準備活動計画の提出
指定された自治体(東京都、富山県、石川県加賀市など)に計画書を提出します。 - 自治体による認定
有望な事業だと認定されると、「起業準備活動確認証明書」が交付されます 。 - 「特定活動」ビザでの入国
この証明書を入管に出すことで、最長1年(自治体によっては2年)の「特定活動」ビザが与えられます 。
最大のメリットは、この1〜2年の間に日本に住みながら、市場調査、顧客開拓、そして「エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの資金調達(3,000万円の確保)」を行う猶予期間が得られることです。
(参考)
経済産業省 外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)
https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/startupvisa/index.html
既存ビザ保有者への影響:更新時の「赤字」と「公的義務」の罠
令和7年10月の大改正は、これから新しくビザを取る人だけでなく、すでに「経営・管理」ビザを持っている外国人経営者にも甚大な影響を及ぼします。
[ 3年間 ] の経過措置
「私はすでに資本金500万円でビザを取っているから関係ない」と思っていませんか?
法改正の施行日前(2025年10月15日以前)からビザを持っている人には、「令和10年(2028年)10月16日」までに行う更新申請に限り、旧基準(資本金500万円等)で審査されるという特例(経過措置)が設けられています。
しかし、これは「今のままで一生大丈夫」という意味ではありません。2028年10月16日以降に到来する更新からは、既存の事業者であっても「資本金(純資産)3,000万円以上」「日本人等の常勤職員1名以上」「日本語N2レベル」という新基準への完全適合が求められます。
現在、小規模で事業を営んでいる経営者は、向こう3年の間に事業を大きく成長させるか、M&Aや外部からの資金調達を行って組織を再編しなければ、日本から退場せざるを得なくなります。
財務状況の悪化(赤字・債務超過)とリカバリー戦略
入管の審査では、事業の「安定性と継続性」が最も重視されます 。そのため、決算が「赤字」や「債務超過」に陥っていると、更新審査は極めて厳しくなります。
ただし、赤字だからといって即座に不許可になるわけではありません。入管は以下のような基準で判断します 。
- 単年度の赤字(剰余金あり)
過去の利益の蓄積(剰余金)があり、債務超過になっていなければ、一時的な要因とみなされ更新される可能性が高いです 。 - 単年度の債務超過
非常に厳しい状況ですが、1年以内に債務超過を解消する具体的な見通し(増資など)があれば、1年のビザが更新される可能性があります 。 - 2期連続の債務超過 / 売上総利益がマイナス
実質的な倒産状態、あるいはビジネスモデルが破綻しているとみなされ、特段の事情がない限り原則不許可となります 。
【起死回生の「事業改善計画書」】
赤字企業が更新を勝ち取るためには、単なる反省文ではなく、中小企業診断士などが裏付けた論理的な「事業改善計画書」が必須です。「なぜ赤字になったのか」「どうやって経費を削減し、売上を伸ばすのか」を客観的な数値と証拠(新規の取引契約書など)をもって証明しなければなりません。
公的義務(税金・社会保険)の厳格化と永住への影響
事業が黒字であっても、日本のルールを守っていなければ更新はできません。
- 税金の納付
法人税、消費税、源泉所得税、住民税などの未納や滞納は致命的です。 - 労働・社会保険の加入
会社を設立すれば、社長1人でも健康保険・厚生年金への加入が義務です。従業員を雇えば労働保険(労災・雇用)の加入も必須です。これらの未加入や保険料の滞納があると、コンプライアンス違反として不許可の対象となります 。
さらに、施行日(2025年10月16日)以降、新基準(3,000万円等)に適合していない状態の経営者は、「永住許可」への変更申請が一切認められなくなりました。経過措置を利用して旧基準のまま更新を続けているうちは、何年日本に住んでも永住権は取れないという厳しいペナルティが課されています。
まとめ:複雑化するビザ申請は、専門家と二人三脚で!
ここまで、在留資格「経営・管理」の最新の取得要件、申請の流れ、そして更新時の注意点について徹底的に解説してきました。
令和7年10月の大改正により、「経営・管理」ビザは、もはや「書類の空欄を埋めれば取れる」ようなものではなくなりました。
3,000万円という莫大な資金の調達と出所証明、日本人従業員の雇用、客観的な事業計画書の策定、そして税務・労務の完璧なコンプライアンス……。これらを外国人起業家がたった一人で完璧に準備するのは、至難の業です。
少しでも書類に不備があったり、入管からの疑義に対して論理的な説明ができなかったりすると、あっけなく「不許可」という結果が突きつけられます。せっかくオフィスを契約し、資金を投じたのに、すべてが水の泡になってしまうリスクがあるのです。
だからこそ、入管法とビジネス構築の実務に精通した専門家(行政書士)のサポートが必要です。
私たちWILL行政書士事務所では、単なる「ビザ申請の代行」にはとどまりません。
- 「今の資金状況で、どうすれば3,000万円の要件をクリアできるか?」
- 「スタートアップビザ(国家戦略特区)を活用した最適な進出ルートはどれか?」
- 「赤字決算からリカバリーするための、入管が納得する事業改善計画の立て方は?」
こうした、多様な視点からの総合的なサポートを提供しております。
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