【メディア掲載】『法で結ぶ未来ドットコム』にて当事務所のインタビュー記事が掲載されました

【特定技能:国別比較】特定技能外国人の受け入れ、国籍によってこんなに違う?手続きの煩雑さと所要期間を徹底比較

「特定技能で外国人を採用したいけれど、どの国の方を受け入れるべきか決めかねている」——人事担当の方からよく聞かれるご意見です。

技能や日本語能力はもちろん大切な判断材料ですが、実は見落とされがちなのが「入国前の自国側の手続きが、国籍によってどれだけ違うか」という点です。同じ特定技能でも、送出国側の制度次第で、受け入れ企業(特定技能所属機関)が対応すべき事務作業の量や、採用から入国までにかかる期間は大きく変わってきます。

この記事では、特定技能の受け入れ実績が多いベトナム・インドネシア・ミャンマー・フィリピンの4か国について、在留資格認定証明書(COE)を取得するまでの間に、送出国側で必要となる手続きを、受け入れ企業の目線から整理します。なお、各国出身の方の宗教・気質・生活習慣上の留意点といった現場でのマネジメントに関する話題は、別のコラムで扱う予定ですので、本記事では手続き面に絞ってお伝えします。

目次

事例:採用国選びで迷った製造業A社のケース

製造業を営むA社では、人手不足を背景に特定技能外国人の採用を検討していました。候補として挙がったのは、ベトナム・インドネシア・ミャンマー・フィリピンの4か国です。

人事担当者は「どの国でも同じような書類を揃えれば良いのだろう」と考えていましたが、登録支援機関に相談したところ、国によって送出機関(現地の人材送り出し機関)を必ず利用しなければならない国と、そうでない国があること、また在留資格認定証明書(COE)の申請前に、日本側に特定の書類の提出が必須な国があることを知り、驚いたといいます。

結果としてA社は、比較的手続きがシンプルなインドネシアと、実績豊富なベトナムの2か国から並行して採用活動を進めることにしました。このように、採用国の決定には技能・日本語力だけでなく、手続き上の負担と所要期間の見通しも重要な判断材料になります。

ポイント整理:国籍選定で押さえるべき2つの視点

送出国側の手続きを比較する際、受け入れ企業が特に押さえておきたいのは次の2点です。

① 送出機関(現地の人材送り出し機関)を必ず利用しなければならないか

「送出機関」とは、現地で労働者の募集・選考・出国前の手続き支援などを担う、各国政府の認定を受けた機関のことです。この利用が法律上「必須」なのか「任意」なのかによって、受け入れ企業が向き合う相手の数や、費用構造がまったく変わってきます。

  • 必須の国:ベトナム、ミャンマー、フィリピン(原則)
  • 任意の国:インドネシア

送出機関の利用が必須の国では、受け入れ企業は現地の認定送出機関との契約・やり取りが避けられません。一方、インドネシアは受け入れ企業が候補者と直接雇用契約を結ぶことも可能で、これが「比較的シンプル」と言われる理由のひとつです。

② COE申請前に、日本側へ送出国発行の書類提出が必須かどうか

もうひとつの重要な分かれ目が、在留資格認定証明書(COE)の交付申請時点で、送出国側の公的な承認書類を出入国在留管理庁へ提出する義務があるかどうかです。

この義務があるのはベトナムのみです。ベトナムでは、労働・傷病兵・社会問題を所管する現地機関(DOLAB系統)が発行する「推薦者表」と呼ばれる書類の承認を事前に受け、これをCOE申請書類に添付する必要があります。この書類が整っていないと、そもそもCOE申請が受理されません。

インドネシア・ミャンマー・フィリピンの3か国は、COE申請の時点で出入国在留管理庁へ提出すべき送出国側の証明書類は求められていません。ただし、これは「送出国側の手続きが不要」という意味ではなく、COE交付後、本人が出国するまでの間に別途、現地での出国前手続きを済ませる必要があるという点に注意が必要です。ここを怠ると、せっかくCOEが交付されても入国に至らない、あるいはCOEの有効期限(3か月)が切れてしまうといった事態になりかねません。

国別・手続きの流れと受け入れ企業の対応事項

それでは、国ごとに手続きの流れと、受け入れ企業が対応すべき事項を見ていきましょう。

ステップで見るベトナムの手続き

ベトナムは4か国の中でも最も手続きが体系立てられている一方、関わる工程数は多くなります。

  1. 送出機関の選定:現地当局(DOLAB系統)の認定を受けた送出機関を選び、労働者を受け入れるための契約(労働者提供契約)を締結します。
  2. 契約の承認取得:この契約について、現地当局の承認を受けます。
  3. 募集・雇用契約の締結:送出機関を通じて候補者を募集し、特定技能雇用契約を結びます。
  4. 推薦者表の承認取得:現地当局から「推薦者表」という書類の承認を受けます。これがCOE申請の前提となります。
  5. COE交付申請:推薦者表を含む必要書類を添えて、出入国在留管理局にCOE交付を申請します。

ベトナムは送出機関の利用が必須であるうえ、COE申請前に現地当局の承認書類を揃える必要があるため、準備段階の工程が最も多い国といえます。他方で制度としての運用実績が長く、送出機関の質を見極めやすいという利点もあります。

なお、ベトナムでは労働者本人が送出機関に支払うサービス手数料について、法律上の上限(契約1年につき賃金1か月分、契約期間を通じて最大3か月分)が定められており、日本向けの送り出しに関しては仲介手数料が実質ゼロとされています。手数料の透明性は、送出機関を選ぶ際の重要な確認ポイントです。

ステップで見るインドネシアの手続き

インドネシアは、送出機関を介さない直接採用が可能な点が最大の特徴です。

  1. 求人情報の登録(任意ながら推奨):現地の公的な求人情報システムに登録します。登録は無料です。
  2. 雇用契約の締結:候補者と直接、特定技能雇用契約を結びます(送出機関を利用する場合は、その機関を通じた契約となります)。
  3. COE交付申請:出入国在留管理局にCOE交付を申請します。この時点で送出国側の証明書類は不要です。
  4. COE交付後、本人による出国前手続き:COEが交付された後、本人が現地の移住労働者保護に関するオンラインシステムに登録し、IDを取得します。現地の窓口で書類審査・労働保険の加入等を経て、出国に必要な証明が発行されます。
  5. 査証申請・入国:証明取得後、日本の在外公館で査証を申請し、入国します。

インドネシアは送出機関の利用が任意である分、COE申請までのステップ自体は比較的シンプルです。ただし、COE交付「後」の本人手続きを忘れると出国できないという落とし穴があるため、受け入れ企業側でもスケジュール管理として本人へのリマインドが欠かせません。

ステップで見るミャンマーの手続き

ミャンマーは制度上の手続きに加えて、現地の政治情勢に左右されやすいという点で、他の3か国と一線を画します。

  1. 送出機関への求人票提出:現地当局の認定を受けた送出機関に求人票を提出し、当局の承認を得ます。
  2. 募集・雇用契約の締結:送出機関を通じて候補者を募集し、雇用契約を締結します。
  3. COE交付申請:出入国在留管理局にCOE交付を申請します。
  4. COE交付後、本人による出国前手続き:本人が現地当局に、海外労働者用の身分証明カード(スマートカード)を申請します。
  5. 出国前の追加承認・査証申請・入国:カード取得後、出国にあたって当局の承認を得たうえで、査証を申請し入国します。

ここで特に注意が必要なのは、出国前の身分証明カードの発行や、出国そのものの承認が、時期によって一時停止・条件変更されることがあるという点です。実際に、発行手続きの一時停止とその後の再開・条件追加が繰り返された時期もありました。書類上の手続きを全て満たしていても、現地の運用状況次第で出国が遅れる可能性がある点は、採用計画を立てる上で織り込んでおくべきリスクです。

ステップで見るフィリピンの手続き

フィリピンは、送出機関に加えて日本側の在外公館(大使館・総領事館内の労働担当窓口)への受け入れ企業自身の登録が必要になる点が特徴的です。

  1. 送出機関の選定・契約:現地当局の認定を受けた送出機関と契約します(受け入れ人数が少人数の場合は例外的に直接雇用が認められる場合があります)。
  2. 受け入れ企業自身の登録:日本にある現地の労働担当窓口に、受け入れ企業として登録申請を行います。書類審査に加え、初回は企業側の代表者等が面接に応じる必要があります。
  3. 登録完了・募集開始:登録が完了すると、送出機関を通じて募集・雇用契約締結に進みます。
  4. COE交付申請:この時点までに現地側の登録・手続きが完了していることが望ましいとされています。
  5. COE交付後、本人による出国前手続き:査証取得後、送出機関を通じて現地当局に海外雇用許可証の発行を申請し、これを取得してから出国します。

フィリピンで特に押さえておきたいのは、受け入れ企業自身が現地の窓口に登録するプロセスがあることと、COEには有効期限(3か月)があるため、現地側の手続き完了を確認してからCOE申請に進むほうが安全という点です。順序を誤ると、COEが先に失効してしまうリスクがあります。

また、フィリピンでは労働者本人からの募集手数料の徴収が原則として認められておらず、採用や渡航にかかる主要な費用は受け入れ企業側の負担が原則とされています。この点は他の3か国とも共通する傾向ですが、フィリピンでは特に明確に位置づけられています。

比較表:国籍ごとの手続き負担の違い

観点ベトナムインドネシアミャンマーフィリピン
送出機関の利用必須任意必須原則必須
COE申請前の送出国発行書類必須(推薦者表)不要不要不要
COE交付後の本人手続き必須(登録・ID取得)必須(身分証明カード)必須(雇用許可証)
受け入れ企業自身の現地窓口登録不要不要不要必要
手続き全体の体感的な煩雑さやや高い(工程が多い)比較的シンプル制度は明確だが運用リスクあり企業側の初動負担がやや大きい
見込み所要期間の目安長め短め状況により大きく変動長め

※所要期間はあくまで一般的な傾向であり、案件ごとの個別事情(送出機関の対応状況、書類不備の有無、現地の運用状況等)によって大きく変わります。特にミャンマーは、出国前承認の運用が時期によって変動するため、他国以上に幅を持って見込む必要があります。

受け入れ企業が採用国を検討する際のチェックポイント

  • 手続きのスピードとシンプルさを重視するなら、送出機関の利用が任意で直接採用も可能なインドネシアが選択肢になりやすい
  • ベトナムは工程は多いものの、制度の運用実績が長く、認定送出機関の情報も比較的入手しやすい
  • ミャンマーは制度自体は整っているが、出国前手続きの運用が変動するリスクを踏まえ、採用スケジュールには十分な余裕を持たせる
  • フィリピンは受け入れ企業自身の現地窓口登録が必要な点を見落とさず、初回採用時は特に準備期間を長めに確保する
  • いずれの国でも、送出機関を利用する場合はその機関が現地政府の認定を受けているかを必ず確認する
  • COEの有効期限(3か月)を踏まえ、送出国側の手続きとCOE申請のタイミングを逆算してスケジュールを組む

おわりに

特定技能外国人の受け入れは、日本国内での在留資格手続きだけでなく、送出国側の制度を正しく理解し、順序立てて対応することが円滑な受け入れの鍵となります。国籍によって手続きの内容も所要期間も異なるため、「どの国から採用するか」を検討する段階で、こうした手続き面の違いを織り込んでおくことをおすすめします。

なお、各制度は改正が頻繁であり、本記事は執筆時点(2026年8月)の公開情報に基づいています。実際の申請にあたっては、出入国在留管理庁や各国在外公館等の最新情報を必ずご確認ください。


いかがでしたでしょうか。この記事が一人でも多くの方のお役に立てれば幸いです。

WILL行政書士事務所では、配偶者ビザ、永住ビザの申請を始めとして、就労ビザ、帰化申請まで、日本で生活する外国人の方の手続きをサポートする業務を行っております。
当事務所の特徴として、「今」必要な申請に留まらず、その人その人の経歴、環境、人生観等を丁寧にヒアリングし、「将来」を見据えた最適な選択をご提案することを信条としております。
日本に長く在留したい方、将来的に永住を考えられている方などは、ぜひ一度ご相談ください。
初回のご相談は無料で受け付けております。
下記のリンクから、お気軽にご連絡ください。皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。

初回無料相談はこちらから

参考法令等

  • 特定技能に関する日本国政府とベトナム社会主義共和国政府との間の協力覚書
  • 特定技能に関する日本国政府とインドネシア共和国政府との間の協力覚書
  • 特定技能に関する日本国政府とミャンマー連邦共和国政府との間の協力覚書
  • 特定技能に関する日本国政府とフィリピン共和国政府との間の協力覚書
  • ベトナム社会主義共和国 Law on Vietnamese Guest Workers(69/2020/QH14)
  • 出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」

参考文献・出典

  • 出入国在留管理庁「ベトナムに関する情報」(moj.go.jp/isa)
  • 出入国在留管理庁「インドネシアに関する情報」(moj.go.jp/isa)
  • 出入国在留管理庁「ミャンマーに関する情報」(moj.go.jp/isa)
  • 出入国在留管理庁「特定技能に関する二国間の協力覚書」(moj.go.jp/isa)
  • 公益財団法人国際人材協力機構(JITCO)ニュース・お知らせ各記事(jitco.or.jp)

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

SNSやってます!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

WILL行政書士事務所 代表
石川県金沢市出身・在住の申請取次行政書士。
元技能実習生監理団体の職員で、自身も国際結婚を経験。
日本で生活する外国人の方をサポートします!

目次