【メディア掲載】『法で結ぶ未来ドットコム』にて当事務所のインタビュー記事が掲載されました

技能実習生・特定技能外国人の忌引き(きびき)・一時帰国、労働者側・企業側それぞれの疑問に答えます

「母国の親が亡くなったと連絡があった。でも、休んでいいのか分からない」
「実習生から一時帰国したいと言われたが、どう対応すればいいか分からない」

外国人労働者を受け入れる現場では、こうした相談が少なくありません。特に、忌引き休暇や一時帰国のルールは法律に細かく書かれているわけではないため、労働者側も企業側も不安になりやすいテーマです。

この記事では、技能実習生・特定技能外国人本人の視点と、受入企業側の視点、両方の疑問に答える形で、忌引き休暇と一時帰国の実務を整理します。

目次

そもそも「忌引き休暇」とは何なのか

まず押さえておきたいのは、忌引き休暇(慶弔休暇)は労働基準法に定められた休暇ではないという点です。労働基準法が定める休暇は、年次有給休暇・産前産後休業・生理休暇などに限られており、忌引き休暇は含まれていません。つまり忌引き休暇は、企業が福利厚生として任意に設ける「法定外休暇」です。

そう聞くと、「じゃあ休めないこともあるの?」と不安になるかもしれません。ですが、実際にはほとんどの企業が制度を設けています。労務行政研究所の2024年調査(5,124社対象)では、結婚休暇・忌引休暇の制度がある企業は99.7%にのぼります。就業規則に定められていれば、その内容は労働契約の一部として会社を拘束するため、「制度がある会社なのに、外国人だから使わせない」ということは許されません。

① 労働者側の疑問:「外国人だから休めない」ということはある?

結論:ありません。国籍を理由に忌引き休暇を認めない、または日数を短くすることは違法です。

根拠:労働基準法3条(均等待遇)

労働基準法3条は、次のように定めています。

使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

ここでいう「その他の労働条件」には、休暇や福利厚生も含まれると解されています。したがって、技能実習生であっても、特定技能外国人であっても、会社に忌引き休暇の制度がある以上は、日本人従業員と同じように利用できます。

パート・有期雇用でも同じ扱いが必要

技能実習生・特定技能1号は多くが有期雇用契約ですが、これも心配は不要です。厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」(厚生労働省告示第430号)は、次のように明記しています。

短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の慶弔休暇の付与並びに健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障を行わなければならない。

つまり、「有期雇用だから」「外国人だから」という理由だけで、忌引き休暇の日数を減らしたり、無給にしたりすることは、パートタイム・有期雇用労働法の観点からも問題となります。
慶弔休暇を有給としている企業は95.5%にのぼり、外国人労働者についても同様の扱いとするのが妥当です。

② 労働者側の疑問:母国の葬儀に参列するための一時帰国は認めてもらえる?

結論:認められるのが原則です。むしろ、拒否すること自体がリスクになります。

技能実習生の場合

技能実習生の一時帰国には、いくつかの種類があります。親族の不幸による一時帰国は「本人の申し出による帰国」にあたり、監理団体の実務解説でも「実習実施者は、有給や忌引き等の扱いで、なるべく技能実習生の意向に沿った対応をしましょう」とされています。

実務の流れは、おおむね次のとおりです。

  1. 一時帰国を希望する理由を、実習実施者(受入企業)に伝える
  2. 団体監理型の場合は、監理団体に報告し了承を得る
  3. 帰国する(費用は法定帰国とは異なり、本人負担となることもあります)
  4. 1か月のうち技能実習を80時間以上行わない場合は、技能実習計画の軽微変更届が必要
  5. 「みなし再入国許可」の手続きをとって再入国する

特定技能外国人の場合

特定技能についても、出入国在留管理庁の「特定技能外国人受入れに関する運用要領」が、受入企業に対して次のような配慮を求めています。

特定技能外国人から一時帰国の申出があった場合は、事業の適正な運営を妨げる場合等業務上やむを得ない事情がある場合を除き、何らかの有給の休暇を取得することができるよう配慮を求める

特定技能外国人にも労働基準法が全面的に適用されるため、有給休暇の申請そのものを拒否することはできません。 すでに有給休暇を使い切っている場合でも、無給休暇などで一時帰国できるよう配慮することが求められています。

「みなし再入国許可」の手続きを忘れずに

一時帰国で特に注意したいのが、この手続きです。出国する空港・海港で、入国審査官に対して「再入国用EDカード」に「みなし再入国許可」を希望するチェックを入れて提出する必要があります。これを忘れて単純出国扱いになってしまうと、再入国できなくなるおそれがあります。パスポートに「一時帰国で再入国予定」というメモを貼っておくといった工夫も、実務上は有効とされています。

③ 労働者側の疑問:「本当に家族が亡くなった証明」を出さないといけない?

これは、労働者にとってもデリケートな疑問だと思います。結論としては、忌引き休暇・一時帰国の段階では、公的な死亡証明書の提出は制度上必須ではありません。

忌引き休暇はそもそも法定外休暇であり、一時帰国も年次有給休暇や社内の忌引き制度で処理されるものなので、公的な証明書の提出を法律上求める根拠自体がないのです。実務上は、訃報の連絡や葬儀関連の書類、あるいは自己申告といった簡易な確認で足りるのが実態とされています。技能実習生・特定技能外国人の一時帰国の手順を見ても、「本人からの理由の聞き取り→監理団体への報告・了承」までで、公的な証明書の取得は手順に含まれていません。

なお、死亡診断書のように詳細な個人情報(死因など)が記載された書類の提出を求めるべきではないとされています。プライバシーへの配慮から、企業側にも慎重な対応が求められる部分です。

(ただし、これはあくまで社内の忌引き・一時帰国の処理についての話です。後述するとおり、相続や保険金請求など「法的な」手続きの段階では、話が変わってきます。)

④ 企業側の疑問:就業規則に忌引き規定がない場合、どう対応すればいい?

就業規則に忌引き休暇の規定がなければ、その企業には制度自体が存在しないことになり、労働者は年次有給休暇を使って対応することになります。この場合でも、外国人労働者からの年次有給休暇の申請を拒否することはできません(労働基準法39条)。

外国人労働者を雇用するのであれば、次の3点を整えておくことをおすすめします。

  • 忌引き休暇(慶弔休暇)を就業規則に明記する
  • 対象親族の範囲・日数・有給無給・遠隔地加算・申請書類を明確に定める
  • 母国語または平易な日本語で説明する(外国人雇用管理指針でも、労働条件の明示は外国人労働者が理解できる方法によるよう努めることが求められています)

一般的な忌引き休暇の日数の目安(続柄別)は、次のようになっています。

続柄一般的な日数の目安
配偶者10日程度(国家公務員は7日)
父母(実父母)7日程度
5日程度
祖父母・兄弟姉妹3日程度
配偶者の父母3日程度

⑤ 企業側の疑問:母国が遠方の場合、通常の日数では足りないのでは?

これは、外国人労働者を受け入れる企業にとって、実務上もっとも重要なポイントの一つです。母国が遠方の場合、通常の忌引き日数だけでは往復の移動時間を賄いきれません。

参考になるのが、国家公務員の制度です。人事院規則15-14に基づく忌引休暇では、「葬祭のため遠隔地に行く必要がある場合は、実際に要した往復日数を休暇に加算することができる」とされています。東京都などの地方公務員も同様の規定を持ち、「片道おおむね6時間以上かかるところ」を遠隔地の目安としている例もあります。

民間企業では移動日を加算しない例も多いのですが、外国人労働者を受け入れる企業には、就業規則に「海外での葬儀等、遠隔地に赴く場合は往復に要する日数を加算する」旨の規定を設けるか、忌引き休暇+年次有給休暇+無給休暇を柔軟に組み合わせる運用を用意しておくことをおすすめします。

⑥ 企業側の疑問:一時帰国を拒否したらどうなる?

拒否は避けるべきです。理由は大きく2つあります。

  1. 労働基準法違反のリスク
    有給休暇の取得を業務上の理由なく拒否することはできません。時季変更権を使えるのは、「代替の人員を確保する術が本当にない」といった限られた場合に限られます。
  2. 失踪・離職のリスク
    出入国在留管理庁の統計では、技能実習生の失踪者数は令和5年(2023年)に9,753人と過去最多を更新しています。家族を大切にする文化圏の労働者にとって、親族の不幸に際する帰国希望を無下に拒否することは、信頼関係の破綻や失踪につながりかねません。受入企業側の責めに帰すべき失踪が発生した場合、技能実習計画の優良認定でも減点対象となり、特定技能・育成就労の受入れ停止につながる可能性もあります。

⑦ 法的な手続きが必要になったら(相続・保険金など)

忌引き休暇・一時帰国の段階では簡易な確認で足りますが、遺体の国際搬送、相続、生命保険金や厚生年金の脱退一時金の請求といった法的な手続きの段階になると、話は変わります。ここでは、母国発行の死亡証明書+日本語訳+(国によっては)認証が必要になります。

送り出し国がハーグ条約(アポスティーユ条約)に加盟しているかどうかで、必要な認証手続きが異なります。

  • アポスティーユで足りる国
    中国(2023年11月発効)、フィリピン(2019年5月発効)、インドネシア(2022年6月発効)など
  • 領事認証が必要な国
    ベトナム、ミャンマー、ネパールなど(ベトナムは2026年9月にアポスティーユ条約が発効予定とされています)

外国語で作成された証明書には、翻訳者の署名を付した日本語訳の添付も必要です。認証手続きは国や制度改正によって変わり得るため、実際に手続きを進める際は、外務省や在日大使館の最新情報を確認することをおすすめします。

まとめ

技能実習生・特定技能外国人の方へ

  • 会社に忌引き休暇の制度があれば、国籍を理由に利用を断られることはありません(労働基準法3条)
  • 有期雇用であっても、日本人と同じ日数・条件で忌引き休暇を利用できます
  • 母国の家族の不幸による一時帰国は、有給休暇(不足時は無給休暇)で対応してもらえるのが原則です
  • 忌引き段階では、厳格な死亡証明書の提出は求められないのが実態です
  • 一時帰国の際は、「みなし再入国許可」の手続きを忘れずに

受け入れ企業の方へ

  • 就業規則に忌引き休暇を明記し、外国人労働者にも同一に適用する
  • 遠隔地(母国)への一時帰国に備え、移動日数の加算を検討する
  • 一時帰国の申し出は、業務上やむを得ない事情がない限り拒否できない
  • 死去の確認は簡易な書類で足り、詳細な個人情報の提出を強制しない
  • 相続・保険金など法的手続きが必要な場合は、送り出し国のハーグ条約加盟状況を確認する

忌引き休暇・一時帰国について正面から扱った公的な資料は必ずしも多くありませんが、労働基準法・パート有期雇用労働法・各種運用要領といった既存のルールを積み重ねることで、労働者・企業双方にとって納得感のある対応が可能になります。個別の事情によって判断が分かれる部分もあるため、迷った際は、社会保険労務士や行政書士、あるいは労働基準監督署の外国人労働者相談コーナー(多言語対応)に相談することをおすすめします。

いかがでしたでしょうか。この記事が一人でも多くの方のお役に立てれば幸いです。
WILL行政書士事務所では、配偶者ビザ、永住ビザの申請を始めとして、就労ビザ、帰化申請まで、日本で生活する外国人の方の手続きをサポートする業務を行っております。
当事務所の特徴として、「今」必要な申請に留まらず、その人その人の経歴、環境、人生観等を丁寧にヒアリングし、「将来」を見据えた最適な選択をご提案することを信条としております。
日本に長く在留したい方、将来的に永住を考えられている方などは、ぜひ一度ご相談ください。
初回のご相談は無料で受け付けております。
下記のリンクから、お気軽にご連絡ください。皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。

初回無料相談はこちらから


参考法令等:労働基準法3条・39条、パートタイム・有期雇用労働法8条・9条、技能実習法1条、特定技能基準省令

参考文献・出典

  • 厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針、厚生労働省告示第430号)
  • 厚生労働省「モデル就業規則」
  • 出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」
  • 出入国在留管理庁「技能実習生の失踪者数の推移」
  • 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」(調査シリーズNo.203)
  • 一般財団法人労務行政研究所「人事労務諸制度実施状況調査」(2024年)
  • 人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

SNSやってます!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

WILL行政書士事務所 代表
石川県金沢市出身・在住の申請取次行政書士。
元技能実習生監理団体の職員で、自身も国際結婚を経験。
日本で生活する外国人の方をサポートします!

目次