この記事はこのような方向けに書いています。
- 地震で自宅が倒壊するなどし、パスポートや在留カードを紛失してしまった外国人の方
- 避難生活のために手続ができず、在留期間が過ぎてしまった、または期限が迫っている外国人の方
- 被災による工場や勤務先の休業・廃業などで、突然仕事を失ってしまった外国人の方
- 被災後の在留資格に関する手続や、今後の日本での生活に不安を感じている外国人の方
- 被災した外国人を雇用しており、必要な対応を確認したい企業・事業者の方
日本は美しい四季がある一方で、地震や台風、大雨といった自然災害が非常に多い国です。
もしあなたが、あるいはあなたの周りの外国人の方がこのような突然のトラブルに巻き込まれてしまったら、言葉の壁や先行きの見えない不安からパニックに陥ってしまうかもしれません。ただでさえ被災して心身ともに疲労している時に、ビザや身分証明書の問題まで重なると「自分は日本から追い出されてしまうのではないか」と恐怖を感じる方も多いでしょう。
でも、どうか安心してください。日本の法律や入国管理局(出入国在留管理庁)では、災害などのやむを得ない事情で困難な状況に陥ってしまった外国人を守るためのルールや、特別な救済措置がしっかりと用意されています。
本記事では、国際業務を専門とする行政書士が、災害時に外国人の方が直面しやすい
「身分証の紛失」
「在留期限の徒過(オーバーステイ)」
「被災による失業」
といった切実なお悩みへの具体的な対処法を、専門用語をできるだけ使わずに分かりやすく徹底的に解説します。
いざという時に自分や大切な家族を守るための知識として、ぜひ最後までお読みください。
災害でパスポートや在留カードを紛失してしまったら?
被災時の混乱の中では、急いで逃げるために貴重品を持ち出せなかったり、家屋が被害を受けて大切な書類がなくなってしまったりすることは珍しくありません。日本で暮らす外国人にとって、「在留カード」「特別永住者証明書」「パスポート」は適正な在留の証拠となる非常に重要な身分証明書ですが、冷静に行動してください。所定の手続きを踏めば、適法に「再交付」を受けることができます。
手続きは、大きく分けて以下の2つのステップで行います。
ステップ1:まずは最寄りの警察署・交番へ届け出る
書類をなくしたことに気づいたら、まずは安全が確保された段階で、最寄りの警察署や交番に行き、「遺失物届(いしつぶつとどけ)」または「盗難届(とうなんとどけ)」を提出してください。 警察で届出をすると、「遺失届出証明書」などの書面(または受理番号)がもらえます。これが、後で入管や市役所に行く際に「本当に災害でなくしてしまった」ということを証明する非常に重要な証拠になります。 また、家屋が倒壊したり流されてしまったりした場合は、市区町村の役所で「罹災証明書(りさいしょうめいしょ)」を発行してもらうことも有効な証明になります。
ステップ2:なくした書類ごとに再交付の申請をする
なくした書類の種類によって、行くべき窓口や手続きのルールが変わります。
① 在留カードの再交付
- 対象者:就労ビザや留学生、家族滞在などの中長期在留者の方
- 申請先:お住まいの地域を管轄する地方出入国在留管理官署(入管の窓口)
- 期限:紛失した事実を知った日から14日以内
- 費用:無料(再交付の手数料はかかりません)
- 持ち物:在留カード再交付申請書、写真1枚(16歳未満は不要)、パスポート、遺失届出証明書や罹災証明書など。もしパスポートも一緒に流されてしまって提示できない場合は、その理由を記載した「理由書」を提出すれば大丈夫です。
- ポイント:原則として、新しい在留カードはその日のうちに即日交付されます。
② 特別永住者証明書の再交付
- 対象者:特別永住者の方
- 申請先:お住まいの市区町村の役所(市役所や区役所など)の窓口
- 期限:紛失した事実を知った日から14日以内
- 費用:無料
- ポイント:在留カードとは異なり、入管ではなく「市役所の窓口」に行く点に注意してください。また、手続きをしてから新しい特別永住者証明書が手元に届く(交付される)までには、通常3週間程度の時間がかかります。
③ パスポートの再交付
- 申請先:ご自身の国籍の在日大使館または領事館
- ポイント:日本の警察で遺失届出証明書をもらった後、各国の大使館等で再発行の手続きを行います。国によって必要な書類(本国の身分証明書や写真の規格など)や、新しいパスポートが届くまでの所要日数が全く異なります。また、近年はスマートフォンの専用アプリから申請できる国(例:中国)や、事前のWEB予約が必須の国(例:アメリカ、台湾)も増えています。必ず事前に各国の領事館ホームページ等でルールを確認しましょう。
避難中に「在留期限」が過ぎてしまった!不法滞在になる?
「大地震で避難所生活を送っており、交通機関もストップして入管に行くことができず、本来のビザの期限(在留期限)を1ヶ月過ぎてしまった…」
これは、被災した外国人の方が最も恐怖を感じる問題です。なぜなら、日本の入管法という法律では、在留期限を1日でも過ぎて日本に留まると、原則として「不法残留(オーバーステイ)」となり、最悪の場合は退去強制(母国への強制送還)の対象になってしまうからです。原則として、期限が過ぎた後からの「在留期間更新許可申請」や「在留資格変更許可申請」は法律上認められていません。
しかし、災害という「自分ではどうすることもできない理由」で期限を過ぎてしまった外国人に対して、強制送還が言い渡されるといったことはありませんので安心してください。以下のような救済の道が用意されています。
救済措置①:例外的に受け付けてもらえる「特別受理」
実務上、本来の在留期限を過ぎてしまった後でも、申請が遅れた理由が「天災、事故、病気」など、申請する本人の責任(落ち度)ではないと認められる場合には、例外的に申請を受理して審査をしてくれる「特別受理」という運用が行われています。
震災の被害に遭って入管に行けなかった事情を記載した理由書や、罹災証明書などをしっかり添えて申請し、それが「特別受理」されれば、引き続き適法に日本に在留できる可能性が高くなります。ただし、これはあくまで例外的な措置であり、法律で明確に定められた権利ではないため、専門家と相談しながら慎重に手続きを進める必要があります。
救済措置②:大規模災害時の「在留期間の自動延長(特例措置)」
被害が広範囲に及ぶ非常に大規模な災害が発生した場合、国がその災害を「特定非常災害」というものに指定することがあります。この指定がされると、被災地に住んでいる外国人を守るため、在留期間の満了日が法律によって一律に数ヶ月間自動的に延長される(特例措置)ことがあります。 例えば、平成23年の東日本大震災の際には、被災した特定区域(青森、岩手、宮城、福島、茨城など)に住む外国人の在留期限が、「平成23年8月31日まで」一律に延長されるという特別な措置が取られました。この場合、事前の個別の手続きは不要で、延長された期間内に更新等の申請を行えば、オーバーステイにはなりません。
大きな災害が起きた際は、まずは落ち着いて法務省や出入国在留管理庁のホームページを確認し、ご自身の住む地域にこのような特例措置が出されていないかをチェックしましょう。
行政書士:中田先日の「令和8年熊本地震」においても、出入国在留管理庁から以下のようなお知らせが出ています。


被災して「会社が倒産・解雇された」場合の在留資格は?
「地震で勤めていた会社が大きな被害を受け、業務が停止して解雇されてしまった。働くためのビザを持っているのに、このままでは日本にいられなくなる?」というご相談も想定されます。
例えば「技術・人文知識・国際業務」といった就労ビザ(働くための在留資格)を持っている方が失業した場合、「仕事をしていないなら今すぐ母国に帰りなさい」と急にビザが取り消されるわけではありません。 法律上は、正当な理由なく「3ヶ月以上」そのビザに該当する活動(仕事)をしていないと、在留資格が取り消される可能性があります。しかし、災害による解雇は完全な不可抗力です。
出入国在留管理庁のルールでは、「ハローワークに通って仕事を探す」「企業の面接を受ける」など、具体的な就職活動を継続して行っていれば「正当な理由がある」とみなされ、3ヶ月を過ぎてもすぐにビザが取り消されることはないとされています。
【具体例】失業後の2つの選択肢
被災による失業後の在留手続きは、主に以下の2つのパターンに分かれます。
- パターンA:同じ職種の仕事に再就職できた場合
特例で延長された期間内や、現在のビザの期限内に、これまでと同じ職種(例:ITエンジニアなら別の会社のITエンジニア)に再就職できた場合は、そのまま「在留期間更新許可申請」を行います。その際、被災して就職活動が難しかった時期があったことなどを説明する書類を添えることで、審査をスムーズに進めることができます。 - パターンB:再就職先が見つからない、または別の仕事に就く場合
「技術・人文知識・国際業務」に当てはまる仕事が被災地で見つからない場合は、他のビザへの変更を検討しなければなりません。例えば、日本人と結婚している方であれば「日本人の配偶者等」へ変更したり、就職活動を長く続けるための「特定活動(告示外指定活動)」という特別なビザへの変更が認められるケースもあります。
⚠️避難・引っ越し・退職の「届出」を忘れずに!
ビザの期限がまだ残っていても、外国人の方には入管法上の重要な義務があります。
会社を退職した時や、避難などで引っ越しをして住所が変わった時は、変更があった日から「14日以内」に入管や市役所に届出をしなければなりません。
- 所属機関等に関する届出
会社を退職・転職した場合は14日以内に入管へ届出が必要です。 - 住居地の変更届出
引っ越し(避難先への住民票の移動など)をした場合は14日以内に新しい市役所等へ届出が必要です。
災害の混乱の中では忘れがちですが、これを怠ると法律違反となり、罰金が科されたり、次回のビザ更新が不許可になったりするペナルティを受ける可能性があります。生活が少し落ち着いたら、必ずこれらの届出を行いましょう。
いざという時のために!外国人向けの防災・避難ツール
言葉の壁がある外国人の方にとって、災害時に「今、何が起きているのか」「どこに逃げればいいのか」という正確な情報を手に入れることは、文字通り命に関わります。 現在、総務省や消防庁、各自治体は、外国人の避難支援のために様々な便利なツールや取り組みを提供しています。平時からこれらを知り、スマホ等で活用できるように備えておきましょう。
- Safety tips(セーフティ・ティップス)アプリ
観光庁が監修している、外国人向けの無料の災害時情報提供アプリです。英語、中国語、韓国語、ベトナム語、ネパール語、やさしい日本語など15言語に対応しており、緊急地震速報や津波警報、台風情報などをスマホにプッシュ通知で知らせてくれます。避難行動のフローチャートも付いているため、日本に住む外国人の方は必ずダウンロードしておくことをお勧めします。
(https://www.rcsc.co.jp/safety-tips-en) - 緊急速報(エリアメール)と自治体の登録制メール
国や自治体からの緊急情報(土砂災害警戒情報など)をスマホに一斉配信する「緊急速報メール」のほか、各市区町村(自治体)が独自に配信している「登録制の防災メール」があります。お住まいの自治体(市役所など)のホームページを確認し、多言語対応の防災メールサービスに登録しておきましょう。 - 多言語対応の避難所と外国人防災リーダー
近年では、大きな災害が起きると、地域の消防団や国際交流協会が連携し、外国語が話せるボランティアや、専門の研修を受けた「外国人防災リーダー(機能別消防団員など)」を避難所に派遣する取り組みが進んでいます。避難所で言葉が分からず困ったり、宗教上の理由で食べられない配給食があったりした時は、遠慮せずに周囲の支援スタッフに声をかけて相談してください。
まとめ:災害時のビザ・入管手続きのSOSは、WILL行政書士事務所にお任せください!
災害はいつ、どこで、誰の身に降りかかるか分かりません。被災した悲しみや生活再建の混乱の中で、慣れない外国の複雑な法律を調べ、入国管理局の厳しい審査に向けた書類を自分一人で準備することは、精神的にも肉体的にも想像を絶する負担となります。
「家が壊れて在留カードをなくしてしまい、どう手続きしていいか分からない」
「避難している間にビザの期限が切れてしまった。強制送還されてしまうのだろうか」
「被災して仕事を失い、生活が苦しい中で次のビザをどうすればいいか悩んでいる」
そのようなご心配をされている方や、知人・友人の方にこの記事が少しでもお役に立てたならば幸いです。
WILL行政書士事務所では、外国人のビザ(在留資格)申請等に関するご相談を随時受け付けております。初回相談は無料となっておりますので、ぜひ下のリンクからお気軽にお問い合わせください。
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