【メディア掲載】『法で結ぶ未来ドットコム』にて当事務所のインタビュー記事が掲載されました

永住者・定住者など外国籍の方は生活保護を受けられるのか──判例と制度から解説

近年、日本で暮らす外国籍の方は増え続けており、その分だけ、病気やけが、失業といった予期せぬ出来事によって生活が立ち行かなくなる方も出てきます。そうしたとき、「生活保護は日本人だけの制度で、自分は対象外なのではないか」と不安に思われる方は少なくありません。

実は、生活保護法という法律そのものは、たしかに外国人を対象としていません。しかし、それは「外国籍の方がまったく保護を受けられない」ことを意味するわけではありません。永住者や定住者、日本人の配偶者など、一定の在留資格をお持ちの方は、事実上の保護を受けられる仕組みが存在します。ただし、その位置づけは日本人の場合とは少し異なり、これまで裁判でも繰り返し争われてきたテーマです。
今回は、具体的なケースを交えながら、外国籍の方が生活保護を受けられるかどうかを、法律の考え方と過去の裁判例から解説します。

目次

実際にあった実例をもとに考えてみましょう

たとえば、実際にあった次のようなケースで考えてみます。

永住者の在留資格を持つ外国籍の男性が、重い病気にかかり、働くことが難しくなりました。貯金も底をつき、生活が苦しくなってきたため、生活保護を受けたいと考えていますが、そもそも申請できるのでしょうか。

このように、病気やけが、失業などをきっかけに生活が困窮し、生活保護の申請を検討される外国籍の方からのご相談は、決して珍しいものではありません。
結論からお伝えすると、このケースでは、生活保護に相当する保護を受けられる可能性が十分にあります。その理由を順を追って説明します。

①生活保護法は「国民」のためのもの、では外国人はどうなる?

まず前提として知っておいていただきたいのは、生活保護法という法律そのものは、外国人を対象としていないということです。生活保護法1条は、この法律の目的を「日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し……必要な保護を行い……」と定めており、条文上「国民」に限定されています。

そう聞くと、「外国人はまったく保護を受けられないのか」と不安になる方もいらっしゃると思いますが、そうではありません。厚生労働省は、適法に日本に滞在し、活動に制限を受けない永住者・定住者等の在留資格を持つ外国人については、人道上の観点から、生活保護法の取扱いに準じた保護を「行政措置」として行っていると説明しています。

つまり、外国人が受けられる保護は、生活保護法という「法律上の権利」ではなく、行政の判断による「事実上の措置」という位置づけです。この違いは些細なものではなく、後述するとおり、不服申立てのしやすさなど実際の取扱いにも影響します。

②どの在留資格の方が対象になるのか

行政措置としての保護の対象となるのは、主に次のような方々です。

  • 永住者
  • 日本人の配偶者等
  • 永住者の配偶者等
  • 定住者
  • 特別永住者(在日韓国人・朝鮮人・台湾人の方など)
  • 難民として認定された方

一方で、技術・人文知識・国際業務や技能実習、特定技能といった就労を目的とする在留資格、留学、短期滞在の方、また在留資格のないいわゆる不法滞在の方は、この行政措置の対象には含まれません。ご自身の在留資格が対象に当たるかどうかが、まず最初の分かれ目になります。

また、来日して間もない方が生活保護を申請する場合、生活費を賄えることを証明する書類の提出を求められ、生活保護を受けることを目的とした来日であることが明らかなときは、急を要する事情がない限り、この行政措置の対象とされない取扱いになっています。

③外国人の生活保護をめぐる裁判の歴史

「外国人は生活保護を受けられるのか」という論点は、実は何度も裁判で争われてきました。読者の方が誤解されやすいポイントでもあるので、主な裁判例の流れをご紹介します。

在留資格のない、いわゆる不法残留者が生活保護を申請したケースでは、最高裁判所(平成13年9月25日判決)が、生活保護法が不法残留者を保護の対象としていないことは、日本国憲法14条(法の下の平等)や25条(生存権)に違反しないと判断しました。この判断の前提として、下級審の東京地方裁判所(平成8年5月29日判決)や東京高等裁判所(平成9年4月24日判決)も、同様の考え方を示していました。

一方、永住資格を持つ外国人についても、大きな裁判がありました。大分県で永住者の在留資格を持つ女性が生活保護を申請したところ却下され、その処分の是非が争われた事案です。
第一審の大分地方裁判所(平成22年判決)を経て、控訴審の福岡高等裁判所(平成23年11月判決)は、永住外国人を保護の対象として認める判断を示しました。ところが、この判決は上告審で覆ります。
最高裁判所は平成26年7月18日、「生活保護法をはじめとする現行の法令上、外国人に生活保護法が適用または準用されると解すべき根拠は見当たらない」とし、外国人は「行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得るにとどまり、生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく、受給権を有しない」と判示しました。

この判決は「外国人への生活保護は違法だと最高裁が認めた」という形で語られることがありますが、正確ではありません。判決文自体が「行政措置により事実上の保護の対象となり得る」と述べているとおり、行政措置としての保護そのものを否定したわけではなく、法律上の「権利」としての受給権がないことを確認したにとどまります。実際、この裁判の原告となった女性も、その後に別の申請を経て生活保護に相当する措置を受けています。

その後も、大阪地方裁判所(平成28年8月判決)が同様の判断を示しているほか、近年では、就労系の在留資格から療養目的の在留資格に切り替わった外国人男性が、重い持病のために生活保護を求めた事案について、東京高等裁判所が令和6年8月6日、請求を認めない判断を示しています。この事案では、原告の在留資格が永住者や定住者など行政措置の対象となる資格に該当しなかったことが、結論を左右する要素の一つとなりました。

これらの裁判例を通じて見えてくるのは、①外国人には生活保護法上の受給権そのものはないこと、②それでも一定の在留資格を持つ方には、行政措置として事実上の保護が実施され続けていること、という二つの側面です。

④根拠となっている通達・法令

外国人への行政措置としての保護は、昭和29年5月8日付の厚生省社会局長通知「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」を根拠としています。この通知は、生活保護法上外国人は対象とならないとしつつ、当分の間、生活に困窮する外国人に対しては、日本国民に対する取扱いに準じて必要な保護を行うことを定めたものです。

そのほか、平成22年10月の「生活保護に係る外国籍の方からの不服申立ての取扱いについて」、平成23年8月の「外国人からの生活保護の申請に関する取扱いについて」といった通知により、実務上の具体的な取扱いが定められています。関連する法令としては、日本国憲法14条・25条、生活保護法1条・2条、出入国管理及び難民認定法別表第2、生活困窮者自立支援法などが挙げられます。

⑤申請から決定までの流れ

実際に申請を検討される場合の流れは、次のとおりです。

  1. 相談:お住まいの地域を所管する福祉事務所(生活保護担当窓口)に相談します。福祉事務所は、市(区)部では市(区)が、町村部では都道府県が設置しています。
  2. 申請:申請書を提出します。書類がすべて揃っていなくても、まずは申請すること自体は可能です。
  3. 調査:世帯の資産・収入・稼働能力・扶養義務者の有無などについて調査が行われます。生活保護は世帯単位で行われ、預貯金や不動産などの資産、働く能力その他あらゆるものを、まず生活のために活用することが前提とされています。また、民法上の扶養義務は、生活保護による保護よりも優先して検討されます。
  4. 決定:原則として申請から14日以内(調査に時間を要する場合でも最長30日以内)に、保護の要否と内容が書面で通知されます。

必要書類は自治体によって異なりますが、預貯金通帳、健康保険証、年金関係の証書、賃貸借契約書、給与を証明する書類などに加えて、外国籍の方の場合は在留カードの提示が求められます。生活が困窮していることを具体的に示すため、預金通帳や給与明細などの資料はできるだけ持参することをお勧めします。

⑥知っておきたい注意点

対象となる在留資格をお持ちの方であっても、いくつか知っておいていただきたい注意点があります。

不服申立てがしにくい場合があること
法律上の権利ではなく行政措置という位置づけであるため、却下されても法律に基づく不服申立て(審査請求)を原則としてできない場合があります。この点は、日本人の場合と大きく異なるところです。

在留資格の更新や永住・帰化への影響
生活保護の受給が、在留期間の更新や永住許可、帰化の審査において考慮される可能性があります。もっとも、病気や失業などやむを得ない事情がある場合には、その事情が十分に考慮されるべきとされており、受給したこと自体で直ちに不利益な結果になるとは限りません。心配な場合は、受給に至った経緯や今後の自立の見通しを、専門家とともに整理しておくとよいでしょう。

まとめ

外国籍の方の生活保護について、ポイントを整理します。

  • 生活保護法そのものは「国民」を対象とする法律で、外国人はその対象に含まれません
  • ただし、永住者・定住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・特別永住者・認定難民などの方は、厚生省(現厚生労働省)の通知に基づく行政措置として、事実上の保護を受けられる可能性があります
  • 就労系の在留資格(技術・人文知識・国際業務、技能実習、特定技能など)や留学、不法滞在の方は、原則としてこの行政措置の対象にはなりません
  • 最高裁判所は、外国人には生活保護法上の「受給権」はないと判断していますが、行政措置による事実上の保護そのものを否定したわけではありません
  • 権利ではなく行政措置であるため、不服申立てのしにくさや、在留資格への影響など、日本人とは異なる注意点があります
  • 対象になるかどうかは在留資格によって大きく異なるため、まずはお住まいの地域の福祉事務所への相談、または専門家への相談をお勧めします

生活に困窮された際、「外国人だから無理だろう」と諦めてしまう前に、ご自身の在留資格が対象に当たるかどうかを確認することが大切です。判断に迷う場合は、お気軽にご相談ください。

いかがでしたでしょうか。この記事が一人でも多くの方のお役に立てれば幸いです。
WILL行政書士事務所では、配偶者ビザ、永住ビザの申請を始めとして、就労ビザ、帰化申請まで、日本で生活する外国人の方の手続きをサポートする業務を行っております。
当事務所の特徴として、「今」必要な申請に留まらず、その人その人の経歴、環境、人生観等を丁寧にヒアリングし、「将来」を見据えた最適な選択をご提案することを信条としております。
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初回のご相談は無料で受け付けております。 下記のリンクから、お気軽にご連絡ください。
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参考法令等

  • 日本国憲法14条、25条
  • 生活保護法1条、2条、4条、55条の5
  • 出入国管理及び難民認定法別表第2
  • 生活困窮者自立支援法
  • 「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」(昭和29年5月8日社発第382号厚生省社会局長通知)
  • 「生活保護に係る外国籍の方からの不服申立ての取扱いについて」(平成22年10月22日社援保発1022第1号)
  • 「外国人からの生活保護の申請に関する取扱いについて」(平成23年8月17日社援保発0817第1号)

参考判例

  • 東京地方裁判所平成8年5月29日判決(判例時報1577号76頁)
  • 東京高等裁判所平成9年4月24日判決(判例時報1611号56頁)
  • 最高裁判所平成13年9月25日判決(判例時報1768号47頁)
  • 大分地方裁判所平成22年判決、福岡高等裁判所平成23年11月判決
  • 最高裁判所平成26年7月18日判決(判例地方自治386号78頁)
  • 大阪地方裁判所平成28年8月26日判決(判例地方自治426号86頁)
  • 東京高等裁判所令和6年8月6日判決(令和6年(行コ)第34号・第129号)

参考文献・出典

  • 厚生労働省「生活保護制度」「被保護者調査」(mhlw.go.jp)
  • 東京都福祉局「生活保護制度とはどのような制度ですか。」(fukushi.metro.tokyo.lg.jp)
  • 大阪市「外国人に対する生活保護について」(city.osaka.lg.jp)
  • 日本経済新聞「永住外国人の生活保護認めず 最高裁が初判断」(nikkei.com)
  • 弁護士JPニュース「『外国人への生活保護は“判例”で憲法違反』は“悪質なデマ”!? 最高裁は何を判示したか【行政書士解説】」(ben54.jp)

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この記事を書いた人

WILL行政書士事務所 代表
石川県金沢市出身・在住の申請取次行政書士。
元技能実習生監理団体の職員で、自身も国際結婚を経験。
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