「外国人の夫と結婚したけれど、夫の姓を名乗るにはどうしたらいいの?」 「日本人の夫と結婚した外国人の私は、夫の姓を名乗れるの?」
国際結婚をされたご夫婦から、こうしたご相談をよくいただきます。実は、日本の法律では「結婚したら自動的に夫婦同じ姓になる」というのは、夫婦がどちらも日本人の場合の話です。外国人配偶者がいる場合、姓(氏)の扱いはまったく別のルールで動いています。
今回は、
- 日本人が外国人配偶者の姓を名乗りたい場合
- 外国人配偶者が日本人配偶者(夫)の姓を名乗りたい場合
の2つのパターンに分けて、それぞれの手続きを分かりやすく解説します。
そもそも国際結婚では姓は変わらない
日本人同士が結婚すると、夫婦は民法750条により同じ姓(氏)を名乗ることになります。しかし、この民法750条は、夫婦のどちらか一方が外国人である婚姻には適用されない、というのが戸籍実務上の一貫した取扱いです(戸籍法16条3項、昭和40年4月12日民事甲第838号民事局長回答)。
外国人の方は日本の戸籍に入らないため、そもそも「民法上の氏」を持っていないと考えられています。そのため、国際結婚をしても、婚姻届を提出しただけでは、日本人配偶者の姓も外国人配偶者の姓も変わりません。夫婦は原則として、結婚前のそれぞれの姓のままになります。
「では、同じ姓を名乗りたい場合はどうすればいいのか」という点が、以下でご説明する2つのパターンになります。
パターン1:日本人が外国人配偶者の姓を名乗りたい場合
< 事 例 >
Aさんは日本人女性で、アメリカ人男性と結婚しました。結婚を機に、夫の姓「〇〇(英語姓)」を名乗りたいと考えています。
手続きは「婚姻から6か月」が分かれ目
日本人配偶者が外国人配偶者の姓を名乗るための制度として、戸籍法107条2項が設けられています。
ポイントは次の2つです。
① 婚姻の日から6か月以内であれば、届出だけでOK
婚姻が成立した日から6か月以内であれば、市区町村役場に「外国人との婚姻による氏の変更届」を提出するだけで、家庭裁判所の許可なく外国人配偶者の姓に変更できます(戸籍法107条2項)。
ここで注意したいのが、6か月の起算日は「婚姻届を役所に出した日」ではなく「婚姻が成立した日」という点です。日本方式で婚姻届を出した場合はその提出日が起算日になりますが、外国で先に結婚が成立し、あとから日本に報告的な婚姻届を提出したケースでは、外国で婚姻が成立した日から数えます。
「結婚してすぐ役所に行けなかったから」と後回しにすると、気づいたときに期限を過ぎていた、ということもあるため、早めの届出をおすすめします。
② 6か月を過ぎた場合は、家庭裁判所の許可が必要
婚姻から6か月を超えてしまった場合は、戸籍法107条1項に基づき、家庭裁判所に「氏の変更許可」の申立てをし、「やむを得ない事由」があると認められて許可(審判)を得たうえで、市区町村役場に届出をすることになります。
「やむを得ない事由」というと厳しく聞こえますが、実務上は、国際結婚のケースについてはある程度柔軟に判断される傾向にあるとされています。通称として婚姻以来ずっと配偶者の姓を使用してきた実績があることや、日常生活・仕事上の不便が生じていることなどの事情が、許可の判断において考慮されるとされています。ただし、婚姻から長期間が経過している場合や、変更の必要性を具体的に示せない場合は、許可のハードルが上がる点には留意が必要です。
複合姓(結合姓)を希望する場合は要注意
「山田」+「スミス」のように、日本人配偶者の姓と外国人配偶者の姓を組み合わせた複合姓にしたいという場合は、たとえ婚姻から6か月以内であっても、戸籍法107条2項の届出だけでは足りず、必ず家庭裁判所の許可(107条1項)が必要になります。また、配偶者の本国の法律で複合姓が認められていることが前提条件となります。
戸籍の扱い
氏の変更届が受理されると、届出人について新しい戸籍が編製されます(戸籍法16条3項)。
日本人配偶者の戸籍の身分事項欄・配偶者欄には、外国人配偶者の氏名・国籍・生年月日などがカタカナで記載されます。
なお、氏の変更の効果は届出人本人にのみ生じ、同籍しているお子さんには自動的には及びません。お子さんも同じ姓にしたい場合は、別途「入籍届」の手続きが必要です(この入籍届自体には家庭裁判所の許可は不要です)。
パターン2:外国人配偶者が日本人配偶者の姓を名乗りたい場合
< 事 例 >
Bさんは外国籍の女性で、日本人男性と結婚しました。
結婚を機に、日本人の夫の姓を名乗りたいと考えています。
パターン1とは法的な位置づけが異なります
ここで大切なポイントは、外国人配偶者ご本人は日本の戸籍に入らないということです。日本人同士の婚姻のように「入籍」という概念自体がなく、外国人配偶者の氏名は、日本人配偶者の戸籍に「配偶者」として記載されるにとどまります。つまり、外国人配偶者には民法上の氏という概念がなく、戸籍法107条の「氏の変更」の制度も使えません。
そのため、外国人配偶者が日本国内で夫の姓を名乗る方法は、法律上の「氏の変更」ではなく、住民票への「通称」記載という形になります。
住民票の「通称」で夫の姓を使う
外国人住民の方も、平成24年(2012年)7月の制度改正により住民基本台帳の対象となり、住民票が作成されるようになりました。この住民票には、本国名とは別に、日常生活で使用している呼称を「通称」として記載することができます。
通称として認められるには、次のような点がポイントとされています。
- すでに日常の社会生活で使用していることが前提(これから使う予定というだけでは不可)
- 勤務先の在職証明書、預金通帳、在学証明書など、使用実績が確認できる資料の提出を求められることが一般的
- 通称は原則1つしか登録できず、頻繁な変更もできませんが、婚姻により配偶者(日本人配偶者)の姓に変更する場合は例外的に認められています
- 使用できるのは日本人が戸籍で使える漢字・ひらがな・カタカナのみで、アルファベットやハングルなどは使用できません
通称が住民票に記載されると、マイナンバーカードや印鑑登録証明書などにも本名と通称が併記されるようになります。
在留カードには通称は載りません
ここで注意していただきたいのが、在留カードや特別永住者証明書には通称は記載されないという点です。在留カードの氏名は、原則としてパスポートに記載された本国名(ローマ字表記)のままとなります。
一方で、もし外国人配偶者の本国において、婚姻を機に本国法上の姓が正式に変更された場合は、その変更が生じた日から14日以内に、地方出入国在留管理局へ「在留カード記載事項変更届出書」を提出する義務があります(入管法19条の10)。この届出を怠ると、罰則の対象となる可能性がありますので、本国で氏名変更の手続きをされた場合は、速やかにご相談ください。
本国での姓の変更は別問題です
日本の市区町村に婚姻届を出しても、その情報が外国人配偶者の本国へ自動的に伝わるわけではありません。本国法上、正式に夫の姓へ変更したいという場合は、本国の役所または在日の大使館・領事館で、別途手続きを行う必要があります。
なお、姓の扱いは国によって大きく異なるとされています。たとえば、婚姻によっても姓が変わらない「姓不変の原則」を採る国もあれば、夫の姓や複合姓への変更を認める国もあります。ご出身国の制度によって対応が変わりますので、個別に確認することをおすすめします。
書類ごとに氏名の表示が変わる点にご注意
外国人配偶者の場合、次のように書類によって氏名の表示が異なる状態になり得ます。
| 書類 | 表示される氏名 |
|---|---|
| 在留カード・特別永住者証明書 | 本国名(原則ローマ字) |
| 住民票・マイナンバーカード・印鑑登録証明書 | 本国名+通称(併記) |
| 銀行口座・雇用契約など | 通称使用が可能な場合もあるが、本人確認書類の提示を求められることが多い |
この不一致が、銀行口座の開設や各種契約の場面でトラブルの原因になることもあるとされています。
あらかじめ、どの書類にどの氏名が使われるかを整理し、本国名と通称の対応関係を証明できる資料(婚姻証明書、住民票など)を準備しておくと安心です。
将来、帰化を考えている場合
外国人配偶者が将来的に日本国籍を取得(帰化)する場合は、帰化許可申請の際に、帰化後に名乗る氏名を新たに設定します。このときに日本人配偶者の姓を選べば、戸籍上も夫婦同姓にすることができます。
ただし、帰化後に氏名を変更するには改めて家庭裁判所の許可が必要になり、簡単ではありません。
将来の帰化を見据えている方は、申請時に慎重に氏名を決めることをおすすめします。
まとめ
- 国際結婚では、婚姻届を出しただけでは夫婦の姓は変わらないのが原則です
- 日本人配偶者が外国人配偶者の姓を名乗る場合:婚姻から6か月以内は市区町村への届出のみ(戸籍法107条2項)、6か月を超えたら家庭裁判所の許可(戸籍法107条1項)が必要です
- 複合姓を希望する場合は、6か月以内であっても必ず家庭裁判所の許可が必要です
- 外国人配偶者が日本人配偶者の姓を名乗る場合:戸籍法上の「氏の変更」ではなく、住民票への通称記載という形になります
- 在留カードには通称は記載されないため、書類ごとに氏名表示が異なる点に注意が必要です
- 本国での正式な姓の変更は別途、本国官憲や領事館での手続きが必要です
制度が複雑に感じられるかもしれませんが、「誰が」「いつまでに」「何を」届け出るべきかを整理すれば、決して難しい手続きではありません。ご不安な点があれば、お早めにご相談ください。

いかがでしたでしょうか。この記事が一人でも多くの方のお役に立てれば幸いです。 WILL行政書士事務所では、配偶者ビザ、永住ビザの申請を始めとして、就労ビザ、帰化申請まで、日本で生活する外国人の方の手続きをサポートする業務を行っております。 当事務所の特徴として、「今」必要な申請に留まらず、その人その人の経歴、環境、人生観等を丁寧にヒアリングし、「将来」を見据えた最適な選択をご提案することを信条としております。 日本に長く在留したい方、将来的に永住を考えられている方などは、ぜひ一度ご相談ください。 初回のご相談は無料で受け付けております。 下記のリンクから、お気軽にご連絡ください。皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。
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※本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。国際結婚に関する手続き・運用は改正や取扱いの変更が生じることがあり、また配偶者の国籍によって取扱いが異なる場合がありますので、実際のお手続きの際は最新の情報をご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。
参考法令等
- 民法750条(夫婦の氏)
- 戸籍法6条、16条3項、107条1項・2項
- 法の適用に関する通則法
- 入管法19条の10(在留カードの記載事項の変更届出)
- 昭和40年4月12日民事甲第838号民事局長回答
- 昭和59年11月1日民二第5500号民事局長通達
参考文献・出典
- 法務省「国際結婚、海外での出生等に関する戸籍Q&A」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji15.html)
- 出入国在留管理庁「在留カードの記載事項に係る届出」関連ページ(https://www.moj.go.jp/isa/)
- 総務省「外国人住民に係る住民基本台帳制度」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/zairyu/index.html)
- 各市区町村役場の戸籍・住民登録に関する案内ページ

