本記事は2025年8月時点の制度・法令に基づいて執筆しています。技能実習制度から育成就労制度への移行(2027年4月1日施行予定)が進んでいる過渡期にあるため、最新情報は出入国在留管理庁の公式サイトでご確認ください。
こんなお悩みはありませんか?
「3年間、一緒に頑張ってきた実習生が帰国してしまった。また働いてもらいたいけど、どうすればいいのかわからない」
「技能実習が終わって母国に帰ったけど、やっぱり日本でもう一度働きたい。でも、どんな手続きが必要なのか……」
技能実習2号または3号を終えて帰国した外国人の方、そして彼ら・彼女たちをもう一度迎え入れたい企業の担当者の方、双方からこうした相談が増えています。
実は、帰国してしまった元実習生が再び日本で働くことは、十分可能です。 しかも、技能実習を「良好に修了」していれば、試験の免除という大きなアドバンテージがあります。
この記事では、元実習生本人と受け入れ企業、それぞれの立場からわかりやすく手続きを解説します。また、どの在留資格(ビザのルート)が自分に合っているかを判定できるチェックリストも用意しましたので、ぜひ活用してください。
まず、全体像を把握しよう
帰国した元技能実習生が日本で再び就労するためのルートは、大きく次の3つです。
| ルート | 対象者のイメージ | 難易度 |
|---|---|---|
| ① 特定技能1号 | 多くの元実習生が選ぶ王道 | ★★☆ |
| ② 特定技能2号 | 長期定住・家族帯同を目指す方 | ★★★ |
| ③ 技術・人文知識・国際業務(技人国) | 大卒等で専門職に就く方(少数) | ★★★ |
約8割の元実習生にとって現実的なルートは「特定技能1号」です。 まずはこのルートを詳しく見ていきましょう。
ルート① 特定技能1号——元実習生にとって最も使いやすい在留資格
特定技能1号とは?
特定技能1号は、一定の技能と日本語能力を持つ外国人が、人手不足が深刻な特定の産業分野(農業・食品製造・建設・介護など計16分野 (※2026年8月現在))で働くための在留資格です。
技能実習と大きく違うのは、「労働者」として正式に扱われること。転職が認められており、受け入れ企業を変えることもできます。
在留期間は1回につき最長1年で、合計5年間在留できます。
技能実習2号修了者への「試験免除」制度
通常、特定技能1号を取得するには、分野別の技能試験と日本語試験(JFT-BasicまたはJLPT N4以上)の両方に合格する必要があります。
しかし、技能実習2号を「良好に修了」した方には、大きな優遇措置があります。
- 日本語試験 → 職種に関わらず全分野で免除
- 技能試験 → 技能実習の職種・作業と特定技能の分野が「対応関係にある」場合に免除
帰国済みであっても、この免除は維持されます。わざわざ試験を受けなくても日本に戻って働けるのです。
「良好に修了」とは具体的に何を指すのか
運用要領では、次の両方を満たすことが必要とされています。
- 技能実習を2年10か月以上修了していること
- 技能検定3級(随時3級)または技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格していること
実技試験を受験していない場合でも、かつての実習先が作成する「評価調書」(参考様式第1-2号)によって良好修了と認められるケースがあります。この書類は後々とても重要になりますので、帰国前に必ず確保しておくことをおすすめします。
技能実習の職種と特定技能の分野は「対応関係」を確認
試験免除で移行できるかどうかは、技能実習2号で従事した職種・作業と、特定技能の業務区分が対応しているかどうかによって決まります。
たとえば「食品製造(農産物漬物製造業)」で技能実習をした方は、特定技能「飲食料品製造業」へ免除で移行できます。一方、技能実習2号移行対象職種の中にも、特定技能に対応する分野が存在しない職種(クリーニングの一般家庭用衣料の洗張 等)があり、その場合は技能試験を別途受験する必要があります。
対応関係は出入国在留管理庁が公表している一覧表で確認できます。わからない場合は行政書士等の専門家に相談するのが確実です。
ルート② 特定技能2号——長期定住・家族帯同を目指すなら
特定技能2号は、1号よりも高い技能水準が求められますが、在留期間の更新に上限がなく、配偶者・子どもを日本に呼び寄せることができます。さらに、一定の条件を満たせば永住許可申請への道も開けます。
原則として特定技能1号を経てからのステップアップとなります。通算で日本に10年以上在留し、そのうち特定技能2号で5年以上就労することで、永住の要件を満たす見通しが立ちます(永住要件は個別事情により異なります)。
なお、特定技能1号・技能実習の在留期間は、永住要件の「就労5年」にカウントされませんので注意が必要です。長期的な日本定住を考えるなら、できるだけ早く2号への移行を計画することが重要です。
ルート③ 技術・人文知識・国際業務(技人国)——一部の方に有効な選択肢
技術・人文知識・国際業務は、エンジニアや通訳、マーケティング担当者など、専門的・技術的業務に従事するための在留資格です。
技能実習で従事していたような現場作業・製造ラインの仕事は、この在留資格の対象業務に含まれません。ただし、元実習生が帰国後に大学等を卒業し、専攻と関連する専門職への就職が決まった場合や、日本語教師・通訳業務・ITエンジニアとして採用される場合などは選択肢になりえます。
要件は厳しく、学歴(大学・短大・専門学校卒)または10年(国際業務は3年)以上の実務経験が必要ですが、その分、在留期間の更新上限がなく、配偶者・子どもの帯同も認められます。
【チェックリスト】あなたに合ったルートはどれ?
以下の質問に順番に答えて、最適なルートを確認してください。
❓ Q1:技能実習2号(または3号)を「良好に修了」しましたか?
- はい
→ Q2へ進んでください - いいえ(途中帰国・修了認定なし)
→ 試験免除は受けられません。希望する分野の技能試験と日本語試験を受験してから特定技能1号を目指すか、学歴・職歴があれば技人国を検討してください。
❓ Q2:技能実習2号で従事した職種・作業が、特定技能の対象分野に「対応関係あり」と確認できますか?
(出入国在留管理庁の対応表で確認)
- はい(対応分野あり)
→ Q3へ。技能試験・日本語試験ともに免除の可能性があります。 - いいえ(対応分野なし)
→ 日本語試験は免除されますが、技能試験の受験が必要です。受験後はQ3へ。
❓ Q3:日本に長く住み続けること(5年超)、家族の帯同、将来の永住を希望しますか?
- はい
→ 特定技能1号でまず再来日→特定技能2号を目指すというキャリアプランを立てましょう。2号への移行条件(分野ごとの試験・実務経験)を早めに確認しておくことが重要です。 - いいえ(数年程度の就労でよい)
→ 特定技能1号(最大通算5年) で十分です。Q4へ。
❓ Q4:日本(または海外)の大学・短期大学・専門学校を卒業しており、専攻と関連する「専門的・技術的業務」への就職が決まっていますか?
- はい
→ 技術・人文知識・国際業務(技人国) も有力な選択肢です。在留期間の更新上限がなく、家族帯同も可能です。業務内容と専攻の関連性が審査の鍵になります。 - いいえ
→ 技人国は難しいため、特定技能1号 を軸に検討してください。
❓ Q5:(企業向け)採用しようとしている元実習生は、御社の海外グループ会社(親会社・子会社など)で1年以上勤務した経験がありますか?
- はい
→ 企業内転勤(在留資格) が選択肢になりえます。ただし業務は専門的・技術的業務に限られます。 - いいえ
→ 企業内転勤は使えません。特定技能1号・技人国等を検討してください。
✅ チェックリストまとめ
| あなたの状況 | 推奨ルート |
|---|---|
| 技能実習2号良好修了・対応分野あり | 特定技能1号(試験免除)→ 最短で再来日可能 |
| 技能実習2号良好修了・対応分野なし | 特定技能1号(技能試験受験後) |
| 良好修了かつ長期定住・家族帯同希望 | 特定技能1号→2号→永住 |
| 大学卒・専攻関連の専門職採用 | 技術・人文知識・国際業務(技人国) |
| 修了未認定・試験受験可能 | 試験合格後に特定技能1号 |
| 海外グループ会社勤務1年以上 | 企業内転勤(条件確認要) |
実際の手続きの流れ——本人編・企業編
【本人(元実習生)がやること】
再来日するためには、日本国内にいる人の「在留資格変更」とは違い、海外から「在留資格認定証明書(COE)」を使って入国する流れになります。
ステップ1:評価調書・修了証明書を準備する
かつての実習先(監理団体・受け入れ企業)から「評価調書」(参考様式第1-2号)を入手します。技能検定3級の実技試験合格証があれば、それが証明書になります。これらは試験免除を受けるための重要な書類です。
ステップ2:受け入れ先(新しい職場)を決める
特定技能では、前の実習先と別の企業で働くことも可能です。受け入れ先が決まったら、雇用契約を締結します。
ステップ3:健康診断を受ける
海外の医療機関で健康診断を受診し、日本語訳を添付した診断書を準備します。この診断書はCOE申請に必要です。
ステップ4:事前ガイダンスを受ける
受け入れ企業(または登録支援機関)から、労働条件・業務内容・入国手続きについて書面や電話・ビデオ通話でガイダンスを受けます。
ステップ5:在留資格認定証明書(COE)の交付を待つ
受け入れ企業側が地方出入国在留管理局に申請します(申請取次行政書士が代行可)。交付までは標準で1〜3か月程度かかります(近年は長期化傾向にあります)。
ステップ6:在外日本公館でビザ(査証)を申請する
COEが届いたら、自国の日本大使館または領事館でビザを申請します。COEがあれば通常は数営業日程度で発給されます。
ステップ7:来日・就労開始
空港での上陸手続きを経て、在留カードが交付されます。市区町村への住所届出を済ませたら就労開始です。
【企業(受け入れ側)がやること】
元実習生を特定技能1号で採用する場合、企業にも一定の要件と準備が必要です。
① 受け入れ要件を確認する
- 過去5年以内に出入国・労働法令違反がないこと
- 支援体制を整えること(自社または登録支援機関へ委託)
- 分野ごとの協議会に加入していること(または加入誓約)
- 同等の日本人労働者と同等以上の報酬を支払うこと
② 雇用契約書を締結する
本人と雇用契約書を結び、労働条件を明示します。特定技能雇用契約の要件(報酬・労働時間・社会保険等)を満たしているか確認が必要です。
③ 1号特定技能外国人支援計画を策定する
生活オリエンテーション、住居確保支援、日本語学習機会の提供など、法定の支援を計画します。自社で対応できない場合は登録支援機関に委託します。
④ 在留資格認定証明書(COE)の交付申請をする
管轄の地方出入国在留管理局に申請します(申請取次行政書士への依頼が一般的)。申請書類は多岐にわたるため、専門家への相談をおすすめします。主な提出書類には次のものがあります。
- 在留資格認定証明書交付申請書・写真
- 雇用契約書の写し・健康診断個人票
- 評価調書(試験免除の場合)
- 支援計画書・協議会加入(誓約)書
- 所属機関・申請人に関する各種書類(第1表・第2表・第3表)
⑤ COEを本人に送付し、ビザ取得・来日を待つ
COEが交付されたら本人に送付します。来日後は在留カードのコピーを保管し、雇用保険・社会保険の手続きを行います。
⚠️ 2027年以降の大きな変化——「育成就労制度」への移行に注意
2027年(令和9年)4月1日から、技能実習制度の後継となる「育成就労制度」が始まります。これに伴い、試験免除の仕組みにも変化が生じます。
現行制度下では、技能実習2号を良好に修了した方の試験免除は「当分の間」(おおよそ2030年頃まで)継続される見込みです。 ただし、これはあくまでも移行期の激変緩和措置であり、今後の育成就労を経て特定技能へ移行する方には試験合格が原則必要になります。
「帰国してしまっているけれど、今の会社でもう一度働いてほしい」という場合、できるだけ早くCOE申請を進めることが重要です。 試験免除という優遇措置を生かせる期間には限りがあります。
なお、技能実習2号良好修了者が、元の実習職種とは全く異なる分野の育成就労として再来日することは、原則として認められていません(過去に2年以上技能実習を行った期間が育成就労の期間として通算されるため)。
まとめ
帰国した元技能実習生が再び日本で働くための主なポイントをまとめます。
- 技能実習2号を良好に修了していれば、帰国後でも試験免除で特定技能1号を取得できる
- 試験免除は職種と特定技能分野の「対応関係」の確認が必須。対応分野がない職種は技能試験の受験が必要
- 手続きの流れは「COE申請→在外公館でビザ取得→来日」。標準で3〜4か月かかるため早めの着手を
- 企業側は受け入れ要件(支援計画・協議会加入・同等報酬等)を事前に整えること
- 長期定住・家族帯同を希望するなら「特定技能1号→2号→永住」の長期プランを早期に描くこと
- 試験免除の優遇措置は概ね2030年頃まで。元実習生を呼び戻すなら今が動き時

いかがでしたでしょうか。この記事が一人でも多くの方のお役に立てれば幸いです。
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参考法令等
- 出入国管理及び難民認定法(入管法)別表第一の二(特定技能)、第2条の5
- 特定産業分野等を定める省令(平成31年法務省令第6号)
- 特定技能外国人の受入れに関する運用要領(出入国在留管理庁)
- 令和6年法律第60号(育成就労法)
- 上陸基準省令(令和7年法務省令第45号)
- 出入国在留管理庁「技能実習2号移行対象職種と特定技能1号における分野(業務区分)との関係について」
- 出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」
- 出入国在留管理庁「育成就労制度に関するQ&A」(Q77・Q80等)
- 出入国在留管理庁「特定技能制度及び育成就労制度の運用状況」(令和7年12月末)
- 厚生労働省「育成就労制度の概要」(有識者会議資料)
参考URL
- 出入国在留管理庁(特定技能):https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/specifiedskilledworker.html
- 出入国在留管理庁(技能実習から特定技能への移行):https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/10_00025.html
- 外国人技能実習機構(OTIT):https://www.otit.go.jp/

