外国人の語学教師や学校の先生を採用したいと考えたとき、「どのビザ(在留資格)を申請すればいいのだろう?」と悩まれる採用担当者様や外国人ご本人様は非常に多くいらっしゃいます。
「英語を教える仕事だから『教育』ビザで間違いないだろう」と思い込んで申請を進めると、実は別のビザに該当する業務であったために不許可になってしまうケースも珍しくありません。学校で教えるのか、民間の英会話スクールで教えるのかによって、取得すべき在留資格は全く異なります。
この記事では、在留資格「教育」の取得要件から、間違いやすい「技術・人文知識・国際業務」ビザとの決定的な違い、申請準備から取得までの流れ、そして注意点まで、専門知識がない方にもわかりやすく、具体例を交えながら解説します。
在留資格「教育」とは?対象となる教育機関の範囲
在留資格「教育」とは、日本の教育機関において語学教育その他の教育を行う外国人のための在留資格です 。
具体的には、本邦の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校又は各種学校、若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において教育をする活動が該当します 。
ここで最も重要なポイントは、「教育」ビザに該当するかどうかは『どこで(どの機関で)教えるのか』によって決まるという点です。
例えば、以下のような機関で教師として働く場合が「教育」ビザの対象となります。
- 公立・私立の小学校、中学校、高等学校
- 特別支援学校、中等教育学校
- 専修学校(専門学校など)
- 各種学校(インターナショナルスクールなど)
一方で、同じ「英語を教える」という業務であっても、民間の語学教室(英会話スクールなど)で教える場合は、原則として「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当します 。
在留資格「教育」を取得するための3つの絶対条件
在留資格「教育」を取得し、日本の教育機関で働くためには、出入国管理及び難民認定法が定める厳格な基準をクリアする必要があります。ここでは、主に教員以外の職(語学教師など)として教育活動に従事する場合や、各種学校等で教育活動に従事する場合に求められる「3つの絶対条件」を解説します。
条件①:学歴または免許に関する要件
以下のいずれか1つに該当している必要があります 。
- 大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと
- 行おうとする教育に必要な技術又は知識に係る科目を専攻して日本の専修学校の専門課程を修了したこと
- 行おうとする教育に係る免許を有していること
大学には、日本の大学だけでなく外国の大学も含まれます 。また、教育に係る「免許」についても、外国で取得した免許が含まれます 。
条件②:実務経験または教育歴に関する要件
教えようとする科目によって、以下のいずれかの条件を満たす必要があります 。
| 科目 | 条件 |
|---|---|
| 外国語の教育をしようとする場合 | その外国語により12年以上の教育を受けていること※ |
| それ以外の科目の教育をしようとする場合 | 教育機関においてその科目の教育について5年以上従事した実務経験を有していること |
※「その外国語により12年以上の教育を受けていること」の意味について説明します。
これは「英語などの語学の授業を12年間受けた」という意味ではなく、「その言語を使って行われた教育(一般の授業など)を12年以上受けている」ことを意味します 。受けた教育内容自体が英語に関係する科目である必要はありません 。
条件③:日本人と同等額以上の報酬要件
- 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
外国人であることを理由に不当に低い給与を設定することは法律で禁止されており、日本人教師を雇う場合と同水準の給与水準を確保しなければなりません 。
徹底比較!「教育」ビザと「技術・人文知識・国際業務」ビザの違い
外国人語学教師の採用において、最も混乱を招きやすいのが「教育」ビザと「技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)」ビザの切り分けです。以下の比較表と具体例で、その違いを明確に理解しましょう。
【比較表】教育ビザ vs 技術・人文知識・国際業務ビザ
| 教育 | 技術・人文知識・国際業務 | |
| 主な活動場所 | 小中高校、特別支援学校、専修学校、各種学校(インターナショナルスクール等)など | 一般企業、民間の語学教室(英会話スクール)、学習塾など |
| 対象となる活動 | 指定された教育機関において語学教育その他の教育をする活動 | 外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務(語学の指導など) |
| 代表的な職種 | 小中高校の語学教師、ALT(外国語指導助手)、インターナショナルスクールの教員 | 英会話スクールの講師、企業の語学研修担当者、通訳・翻訳者 |
具体例1:英会話スクールの講師として採用する場合
日本の教育機関(小中高校など)ではなく、民間の語学教室などで語学教師として働く場合は、「教育」ではなく「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当するのが一般的です 。
具体例2:ALT(外国語指導助手)として働く場合
ALTの働き方には、大きく分けて「教育機関に直接雇用される場合」と「派遣会社に雇用され、教育機関に派遣される場合」の2パターンがあります。 派遣会社に所属し、公立学校などの教育機関に派遣されて勤務するALTの場合でも、実際に教育活動を行う場所が教育機関であるため、在留資格は「教育」となります 。
具体例3:教育機関の教師が一般企業に派遣される場合
教育機関に所属する教師が、その教育機関の指示によって一般企業等に派遣されて語学などを教える場合、活動の主体が教育機関の業務の一環であるため、「教育」の活動に含まれます 。 ただし、教育機関以外の一般企業に直接雇用され、その会社の社員として語学教育(社員研修など)を行う場合は、「技術・人文知識・国際業務」となります 。
よくある疑問にお答えします!教育ビザ関連のQ&A
ここでは、在留資格「教育」に関連して、相談が絶えない疑問について解説します。
- インターナショナルスクールで教える場合のビザは何になりますか?
-
原則として「教育」ビザになりますが、スクールの要件によって異なります。
「外交」「公用」「家族滞在」などの在留資格で日本にいる子弟に対して、外国語で初等・中等教育を行うことを目的として設立された教育機関(いわゆるインターナショナルスクール)で教える場合は、一定の学歴等の要件を満たし、日本人と同等額以上の報酬を受ければ、「教育」ビザに該当します 。 ただし、インターナショナルスクール以外の幼児向け英語教室や保育園などで、主として日本人の幼児に英語を教えるようなケースでは、「技術・人文知識・国際業務(国際業務カテゴリー)」となる可能性が高いです 。
- 外国の大学の「日本分校」で採用された場合はどうなりますか?
-
その分校が「学校法人」の認可を受けているかどうかで分かれます。
文部科学省等から学校法人の認可を受けている外国大学の日本分校(例:北京語言大学東京校など特定の機関)に雇用された場合は、「教育」ビザが決定されます 。 これら以外の、学校法人認可を受けていない外国の大学の日本分校に採用された場合は、「技術・人文知識・国際業務」ビザとなります 。
- 「教育」ビザを持っていますが、夜間や休日に英会話スクールでアルバイトをしてもいいですか?
-
事前に「資格外活動許可」を取得する必要があります。
在留資格「教育」は、指定された教育機関で教育活動を行うためのビザです。民間の英会話スクールでの講師活動は「技術・人文知識・国際業務」の範囲となるため、「教育」ビザのままでは働くことができません。アルバイトとして副業で行う場合は、出入国在留管理局で「資格外活動許可」を受ける必要があります 。
申請準備からビザ取得までの具体的な流れ
海外にいる外国人を新しく呼び寄せる場合(在留資格認定証明書交付申請)の基本的な流れと、必要な書類について解説します。
カテゴリーの確認
「教育」ビザの申請では、所属する教育機関の性質や勤務形態によって、提出すべき書類が「カテゴリー1」から「カテゴリー3」に分けられています 。
- カテゴリー1
小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校に常勤で勤務する場合 - カテゴリー2
上記以外の教育機関に常勤で勤務する場合 - カテゴリー3
非常勤で勤務する場合
基本的な申請のステップ
- 採用の内定・雇用契約の締結
- まずは教育機関と外国人との間で雇用契約を結びます(ビザ取得を条件とする停止条件付き契約が一般的です)。
- 必要書類の収集・作成
- 【申請人が準備するもの】顔写真(申請前3か月以内に撮影)、履歴書、卒業証明書や成績証明書、教員免許状の写しなど。
- 【教育機関が準備するもの】在留資格認定証明書交付申請書、雇用契約書の写し、学校のパンフレットや設置認可書など。
- 出入国在留管理局への申請(在留資格認定証明書交付申請)
- 教育機関の職員や、依頼を受けた行政書士が日本の管轄出入国在留管理局へ申請します。
- 審査・認定証明書の交付
- 審査を経て問題がなければ、「在留資格認定証明書(COE)」が交付されます。
- 海外の本人へ郵送・査証(ビザ)申請
- COEを海外にいる本人に郵送(又はメール転送)し、本人が現地の日本大使館・領事館で査証申請を行います。
- 日本への入国・在留カードの交付
- 査証が発給されたら来日し、空港(※例外あり)で「教育」の在留カードを受け取ります。
教育ビザ申請時の注意点
ビザ申請をスムーズに進め、不許可という最悪の事態を防ぐためには、以下の点に十分注意してください。
① 発行から3か月以内の書類を使用する
官公署等から取得する公的な提出資料(各種証明書など)は、全て「発行日から3か月以内」のものを提出する必要があります 。海外から取り寄せる書類は時間がかかることがあるため、スケジューリングには注意が必要です。
② 外国語の書類には必ず「日本語訳」を添付する
提出資料が外国語(英語など)で作成されている場合は、必ず日本語訳を添付しなければなりません 。翻訳者の署名も忘れずに行いましょう。
③ 原本返却の希望は申請時に必ず伝える
提出した資料は、原則として返却されないと考えた方がいいです 。卒業証明書の原本など、再度入手することが困難な資料の返却を希望する場合は、当該資料の原本にコピーを添えて、申請窓口でその旨を明確に伝える必要があります 。
④ 実際の業務内容との「ズレ」に注意する
前述した通り、「学校で教えるのか」「民間スクールで教えるのか」によってビザの種類が変わります。申請書には「教育」として申請したのに、実態は自社が運営する民間の英会話教室での勤務がメインであった場合、虚偽の申請とみなされ、不許可やビザ取消しの対象となる重大なリスクがあります。職務内容と勤務場所の実態は、法律に照らし合わせて正確に把握することが不可欠です。
まとめ:外国人語学教師のビザ申請に迷ったら専門家へご相談を
いかがでしたでしょうか。在留資格「教育」は、日本の公教育やそれに準ずる機関で働くための非常に重要な在留資格です。しかし、その要件や「技術・人文知識・国際業務」ビザとの線引きは極めて複雑であり、教育機関の種別や契約形態によって細かく規定が分かれています。
「自校で採用予定の外国人は、教育ビザと技人国ビザのどちらに当てはまるのか?」
「海外の学校を卒業しているが、学歴要件や12年要件を満たしているか不安だ」
このようなお悩みを抱える人事・採用担当者様や外国人ご本人様は、ビザ申請のプロフェッショナルである行政書士に一度ご相談されることを強くお勧めいたします。申請を間違えて不許可になってしまうと、採用計画の遅れや、外国人本人の日本でのキャリアに大きな支障をきたすことになりかねません。
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