日本に来るたびに、空港の入国審査の長い列に並ぶ。そんな経験はありませんか。仕事で何度も来日する方や、日本が大好きで毎年のように旅行に来る方にとって、この待ち時間は意外と負担になります。
そこで知っておきたいのが、トラスティド・トラベラー・プログラム(Trusted Traveler Program、以下「TTP」)という制度です。一定の条件を満たして「信頼できる渡航者」と認められると、専用のカードを使って、審査官との対面審査なしに自動化ゲートで出入国できるようになります。
この記事では、TTPの仕組み、使える人の条件、申請の流れ、費用、注意点を、出入国在留管理庁(以下「入管庁」)の公式情報をもとに、できるだけやさしく解説します。
※この記事は2026年10月時点の情報にもとづいています。制度の内容や受付時間は変わることがありますので、申請の前に必ず入管庁の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
こんなお悩みはありませんか?
次のような方に、TTPは役に立つかもしれません。
- 海外の会社に勤めていて、日本の取引先との打ち合わせのために、年に何度も来日する。毎回、入国審査の列が長くて困っている。
- 日本旅行が大好きで、毎年のように家族と観光に来ている。できれば入国の手続きをスムーズに済ませたい。
- 日本の会社の担当者。海外の取引先の方が頻繁に来日するので、手続きを楽にしてあげたいが、何をすればよいかわからない。
- 日本で暮らしている外国人。出張や帰省のために、よく日本と海外を行き来している。
ケース①〜③の方はTTPが関係します。ケース④の方は、TTPではなく、別の制度(本記事の「6」で説明します)を使います。
TTPとは? ― 「短期滞在」の方のための自動化ゲート
TTPは、観光、商用(会議や商談)、親族の訪問など、日本に短期間だけ滞在する外国の方のうち、一定の条件を満たした方に「特定登録者カード」を交付し、空港の自動化ゲートを使えるようにする制度です。平成28年(2016年)11月に始まりました。
用語を整理しておきます。
- 自動化ゲート
パスポートや指紋などを機械で確認して、審査官と対面しなくても出入国の手続きができるゲートです。 - 特定登録者カード
TTPに登録された方に交付されるカードです。入国の記録は、パスポートのスタンプの代わりに、このカードに記載されます。 - 短期滞在
観光や商用、親族訪問など、原則として日本で収入を得ない短期間の滞在のための在留資格です。
TTPのメリット
TTPに登録すると、次のようなメリットがあります。
- 審査ブースの列に並ばず、自動化ゲートで出入国できます。
- 入国カード(外国人入国記録)の内容を、事前にオンラインで登録しておけます。
- パスポートにスタンプが押されません。
- 一度登録すれば、自動化ゲートのある成田空港、羽田空港、中部空港、関西空港のどこでも使えます(ただし、ターミナルによって使えない場合があります。成田の第3ターミナル、羽田の第2ターミナルの国際線、中部の第2ターミナルは対象外です)。
誰がTTPを使えるの? ― 論点を整理しましょう
TTPを使うには、共通の要件とカテゴリー(A〜E)の要件の両方を満たす必要があります。
ポイント① 共通の要件(主なもの)
- 日本にもう一度来るとき、短期滞在の目的で滞在すること
- 指定登録場所に出向く日から数えて過去1年以内に、カテゴリーごとに決められた回数以上、日本に入国していること(出向くときの入国も回数に含まれます)
- 過去に日本から退去強制されたことや、出国命令で出国したことがないこと
- 日本が査証(ビザ)免除の措置をとっている国・地域のうち、TTPの対象として定められた国・地域の旅券(パスポート)を持っていること(カテゴリーAを除きます)
- 罰金刑以上の刑に処せられたことがないこと(政治犯罪を除きます)
- 指紋や顔写真の提供ができること
- 入管法で定める「上陸拒否事由」に当てはまらないこと
対象となる国・地域の一覧は、入管庁の公式サイトに掲載されています。追加されることもあるため、最新の一覧をご確認ください。二重国籍の方は、どちらか1つの旅券でしか登録できません。
ポイント② 5つのカテゴリー
カテゴリーは、あなたの立場によって次の5つに分かれます。
| カテゴリー | 対象となる方 | 1年以内の入国回数 |
|---|---|---|
| A 日米二国間渡航円滑化イニシアティブ | 米国の「グローバル・エントリー・プログラム」に登録している米国籍の方 | 2回以上 |
| B 所属機関 | 一定の機関・企業に、役員または常勤の職員として所属している方 | 1回以上 |
| C 日本の機関等からの招へい | 日本の公的機関や上場企業などと業務上の関係があり、その機関・会社から登録の要望を受けている方 | 1回以上 |
| D 十分な資力信用 | プラチナランク以上のクレジットカード(個人名義)を持っている方 | 2回以上 |
| E 家族 | 登録を受けた方(カテゴリーB〜D)の配偶者、または未成年で未婚の子 | 1回以上 |
カテゴリーBの「一定の機関」とは、次のようなところです。
➡ 日本や、日本と査証免除の取決めがある国・地域の政府・地方公共団体、国際機関、日本や対象国・地域の取引所に上場している株式会社、資本金(出資の総額)が5億円以上の日本や対象国・地域の法人などです。
これらの機関に「実際に所属している」ことを、在職証明書などで示す必要があります。親会社や関係会社の資料だけでは足りません。
カテゴリーDは、機関や企業に所属していない観光客の方が利用しやすいカテゴリーです。
「ゴールド」以下のカードや法人カードは対象外です。国際ブランドは、VISA、Mastercard、American Express、Diners Club、Discover、JCB、銀聯(UnionPay)が対象です。
カテゴリーEの「未成年」は18歳未満です。父母は対象外で、配偶者と子だけが対象になります。
ポイント③ 費用と有効期間
- 申請そのものは無料です。
- 特定登録者カードの交付には、4,000円分の収入印紙が必要です(クレジットカードなどでは支払えません)。
- カードの有効期間は、交付日から3年間、またはパスポートの有効期間が終わる日のいずれか早い日までです。
申請から利用までの流れ ― ステップで確認しましょう
ステップ1 プレチェック(任意・無料)
入管庁の公式サイトで、いくつかの質問に答えると、自分が当てはまるカテゴリーの可能性と、必要な書類の一覧を確認できます。あくまで簡易チェックですので、「可能性あり」と表示されても、登録が約束されるわけではありません。
ステップ2 利用希望者登録の申請
申請方法は、オンラインと直接の2つです。
- オンライン申請(おすすめ)
「特定登録者情報システム」でユーザー登録をして、申請内容を入力し、顔写真と疎明資料(申請の内容を裏づける書類)のデータをアップロードします。入力は英語で行います。 - 直接申請
日本国内の指定登録場所で、申請書と疎明資料の原本を提出します。ただし、この場合も連絡用のメールアドレスが必要で、後日の二次審査のためにもう一度出向く必要があります。直接申請したからといって、結果が早く出るわけではありません。
なお、代理人による申請はできません。日本の取引先の会社や、親が子の分を代わりに申請することも認められていません。
ステップ3 一次審査
入管庁が書類を審査し、結果をメールとシステム上でお知らせします。通過した場合は「一次審査完了」のメールが届きます。登録が認められなかった場合は、システムにログインして理由を確認できます。
ステップ4 来日(短期滞在で入国)
一次審査を通過したら、メールを受け取ってから6か月以内に、短期滞在で日本に入国します。このときは、通常の審査ブースで入国審査を受けます。この入国も、入国回数の数に含まれます。
ステップ5 二次審査(指定登録場所)
空港などの指定登録場所に出向き、指紋と顔写真を提供して、疎明資料の原本を提出します。ここでも代理人は認められません。
ステップ6 特定登録者カードの交付
登録が認められると、手数料(4,000円分の収入印紙)と引き換えにカードが交付されます。カードを受け取った後の出国のときから、自動化ゲートを利用できます。
指定登録場所は、成田・羽田・中部・関西の各空港と、東京・名古屋・大阪の各出入国在留管理局にあります。窓口ごとに場所と受付時間が違いますので、出かける前に入管庁の公式サイトの一覧でご確認ください。空港の出国審査場の中にある窓口は、収入印紙を持っていないと手続きができません。印紙は出国審査場の中では買えないため、事前に郵便局などで用意しておきましょう。
申請前に知っておきたい注意点
TTPには、うっかりすると手続きがやり直しになる落とし穴があります。
① 二次審査は「一次審査完了から6か月以内」
6か月を過ぎてしまうと、原則として登録が認められません。来日の予定が先になる方は、申請のタイミングを調整しましょう。
② 疎明資料は「申請前3か月以内」に作成したものを
在職証明書や要望書などは、申請の前3か月以内に作成されたものが必要です(クレジットカードを除きます)。日本語・英語以外の書類には、日本語か英語の訳文もつけます。
③ 二次審査には「原本」を持参
原本を本国に置いてきてしまうと、その回はカードを受け取れません。
④ パスポートを更新したら、新たに申請が必要
カードの有効期間内でも、パスポートを更新すると、そのカードは使えなくなります。更新はできないため、あらためて登録を申請します。
⑤ 入国回数は「出向く日から過去1年以内」で数える
カテゴリーAとDは、二次審査の時点で、過去1年以内に2回以上の入国が必要です。
⑥ カードを忘れたら、通常の審査ブースへ
カードがないと、自動化ゲートは使えません。なお、入国にはカードとは別にパスポートも必要です。入管庁のQ&Aでは、日本に滞在している間はカードを携帯するよう求められています。
⑦ スタンプが必要な方は、その場で申し出る
自動化ゲートを使うと、パスポートにスタンプは押されません。スタンプが必要な場合は、出国の際にその場で職員に伝えてください。
⑧ 在留資格を変更すると、登録は抹消される
短期滞在のまま在留期間を更新する場合は問題ありませんが、ほかの在留資格に変更すると、TTPの登録は抹消されます。
⑨ 要件を満たさなくなったら使えなくなる
カードをもらった後に有罪判決を受けたり、上陸拒否事由に当てはまったりした場合などは、登録が抹消されます。
⑩ 申告は正確に
申請書には、有罪判決歴や、退去強制・上陸拒否の経験を答える欄があります。事実と違う申告をすると、登録の抹消だけでなく、今後の日本への入国審査にも不利になるおそれがあります。
お子さまの利用について
年齢制限はありません。ただし、小さいお子さまは指紋が安定していないため、登録や認証ができない場合があるとされています。また、自動化ゲートは1人ずつ通過する仕組みなので、親子が一緒に通ることはできません。
Visit Japan Web・顔認証ゲートとの違い
名前が似ていて混同しやすいものを、整理しておきます。
| 仕組み | 特徴 |
|---|---|
| TTP(特定登録者カード) | 事前の審査が必要(手数料あり)。入国・出国の両方で自動化ゲートを使える |
| 顔認証ゲート | 事前の登録は不要。短期滞在の外国人は、出国のときに使える |
| Visit Japan Web | 入国審査や税関申告の情報を事前に登録するサービス(無料)。TTP利用者の入国カード情報は、別に「特定登録者情報システム」で登録する |
行政書士:中田自動化ゲートで入国審査を終えたあとも、税関での携帯品・別送品の申告は別に必要です。
立場別のQ&A
日本の企業の担当者の方へ
海外の取引先の方の来日をスムーズにしたい場合、カテゴリーCが関係します。日本の公的機関や上場企業などが「業務のために繰り返し来日する必要がある」として、その方の登録を要望する場合に使えます。要望書は、申請前3か月以内に作成したものが必要です。
ただし、申請そのものは、本人が行う必要があります。企業が代わりに申請することはできませんので、ご注意ください。
日本に住んでいる外国人の方へ
在留カードを持つ中長期在留者の方は、TTPの対象外です。かわりに、「再入国許可等による自動化ゲート利用登録」という別の制度を使います。この制度は、空港や出入国在留管理局の窓口で、無料で登録できます(当日の登録も可能です)。
TTPで入国したあとに、在留資格を変更して中長期在留者になった場合も、TTPの登録は抹消されます。その場合は、中長期在留者向けの登録を行いましょう。
もし不許可になったら?
不許可になった理由は、システムにログインして確認できます。二次審査で認められなかった場合は、その理由が伝えられます。
TTPの不許可に対しては、行政不服審査法による審査請求はできません(外国人の出入国に関する処分は、同法の適用除外とされているためです)。不服がある場合は、行政訴訟で争うことになります。
もっとも、申請の回数に制限はありません。前回の申請を取り下げてから、あらためて申請できます。ただし、前回と状況が変わっていなければ、結果も変わらないとされています。不足していた資料を補ったり、別のカテゴリーでの申請を検討したりしてから、再度挑戦するのがよいでしょう。
まとめ
- TTPは、短期滞在で日本に何度も来る外国人が、自動化ゲートで出入国できる制度です。
- 使うには、共通の要件と、カテゴリーA〜Eのいずれかの要件を満たす必要があります。観光客の方はカテゴリーD、会社員の方はカテゴリーBやCが現実的です。
- 流れは「プレチェック → 申請 → 一次審査 → 6か月以内に来日 → 二次審査 → カード交付(4,000円)」です。
- 申請は本人が行います。代理申請はできません。
- カードの有効期間は最長3年です。パスポートを更新したら、新たに申請が必要です。
- 日本に住んでいる方は、TTPではなく、無料の自動化ゲート利用登録を使います。
制度や手数料は、今後変わる可能性があります。申請する前に、入管庁の公式サイトで最新の情報をご確認ください。


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参考法令等
- 出入国管理及び難民認定法 第9条第8項第1号ハ、第9条の2、第5条
- 出入国管理及び難民認定法施行規則 第7条の2
- 出入国管理及び難民認定法施行令 第25条
- 行政不服審査法 第7条第1項第10号
参考文献・出典
- 出入国在留管理庁「トラスティド・トラベラー・プログラム」 https://www.moj.go.jp/isa/immigration/procedures/ttp2_index.html
- 出入国在留管理庁「トラスティド・トラベラー・プログラムの概要」 https://www.moj.go.jp/isa/immigration/procedures/ttp2_outline_index.html
- 出入国在留管理庁「自動化ゲート利用案内」 https://www.moj.go.jp/isa/immigration/procedures/01_00160.html
- 出入国在留管理庁「TTPカテゴリー、疎明資料一覧」 https://www.moj.go.jp/isa/immigration/procedures/ttp2_pre-check_pre-check_document.html
- 出入国在留管理庁「指定登録場所」一覧 https://www.moj.go.jp/isa/immigration/procedures/ttp2_pre-check_pre-check_document07.html
- 出入国在留管理庁「TTPのプレチェック」 https://www.moj.go.jp/isa/immigration/procedures/ttp2_pre-check_index.html
- 出入国在留管理庁「よくある質問(問と回答)」 https://www.moj.go.jp/isa/immigration/procedures/ttp2_q_a_faq_a_ja.html
- 出入国在留管理庁「自動化ゲートの運用について(お知らせ)」 https://www.moj.go.jp/isa/immigration/resources/nyuukokukanri01_00111.html
- 出入国在留管理庁「2025年4月1日から在留手続等に関する手数料が改定されます」 https://www.moj.go.jp/isa/content/001431802.pdf
- e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」 https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/326CO0000000319
- e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法施行規則」 https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/356M50000010054










